遅れる米の駐日大使任命、本命ナイ氏めぐる舞台裏、ミネタ元商務長官が急浮上
ワシントンでも東京でも、ハーバード大学教授のジョセフ・ナイ氏 (元クリントン政権の国防次官補)が新しい駐日大使になると見られている。しかしその観測が伝えられてから数カ月が過ぎたのに、ホワイトハウスから正式の発表はない。
1月上旬の日本の新聞で、ナイ教授は駐日アメリカ大使に就任と報じられた。オバマ氏が大統領に就任すれば、すでに心づもりのあったナイ教授を大使に任命するだろうという報道であった。しかし当のナイ教授は時期尚早だと述べ、それ以降、この件についてコメントを控えている。
実際、ナイ教授はオバマ氏の大統領就任を準備する「移行チーム」から、年初にアジアの大使に就任するのはどうかと打診を受けている。移行チームのスタッフは、ナイ教授の赴任先として中国、インド、日本を候補として考えていたようだ。それに対してナイ教授は就任先をチームに任せるという対応をしたと言われる。その後、再びナイ教授に、駐日大使就任の要請があれば拒絶することはあるか、という問い合わせがあり、教授は、それはない(拒絶はしない)、と返答したと伝えられている。
しかしその後、そのままの状態が続いている。この件に近い情報筋によれば、ナイ教授はいまだに重要な職務の任命を打診される場合に必要とされる納税書類などの提出を要請されていない。FBIも内国歳入庁も、高官任命に先立って必ず行うバックグラウンド・チェックを、ナイ教授に対して開始していない。
ただ歴史を遡ると、米国が過去に送った日本への大使は30年で6人である。そして1人を除いて4月までに任命されなかった。オバマ政権と同じ民主党政権の場合、カーター大統領はマンスフィールド大使(元上院院内総務)を4月(1977年)に任命、クリントン大統領はモンデール大使(元副大統領)を6月(93年)に任命、フォーリー大使(元下院議長)を8月(97年)に任命している。過去のケースからすると、時期的には、ナイ教授がこれから任命されてもおかしくないことになる。
オバマ政権では多くの政府のトップポジションがいまだ任命されないままである。オバマ大統領はヘルスケア分野の改革のため厚生長官に任命しようとしたダシュル元民主党上院院内総務が、政権発足直後、納税漏れを指摘され、任命できなかった経緯がある。そのため、任命のための事前調査はますます慎重になり、高官たちの就任のペースを、ひどくダウンさせてしまう弊害を生んでいる。