遅れる米の駐日大使任命、本命ナイ氏めぐる舞台裏、ミネタ元商務長官が急浮上

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 ナイ教授は軍事力などハードパワーではなく、文化などソフトパワーを外交戦略の主軸に据えている。民主党の多くの人から尊敬されている人物だ。今のところヒラリー・クリントン国務長官とはコンタクトをとっていないが、すでにスタインバーグ国務省副長官とは、さまざまな外交問題について協議している。

大統領が変わればまず高官交代となり、各省庁の主要なポストが埋まってから、大使は任命されていくと見られる。

ただすでに既成事実化しているナイ教授の駐日大使任命が確実かというと、その通りにならないことも実は少なくない。ナイ教授のもとで国防次官補代理をつとめ、今回、日本など東アジアを担当する国務次官補に有力視されているカート・キャンベル氏。彼もまた正式に任命されていないことが、ナイ教授の駐日大使就任に影を落としている。

 こうした中で、日系人であるノーマン・ミネタ元商務長官(右写真)の名前が駐日大使候補として浮上してきている。

ホワイトハウスが駐日大使を最終的に決めようとするとき、政治的な計算からミネタ氏がナイ氏より有力になるかもしれない。ミネタ氏は下院議員を20年つとめ、シリコンバレーを代表する政治家であった。初めてのアジア系アメリカ人として、商務長官(クリントン政権)、運輸長官(ブッシュ政権)など閣僚になった経験も有する。ミネタ氏はクリントン夫妻と親しかったが、地元のカリフォルニアにおける民主党の大統領候補を選ぶ予備選挙では、オバマ大統領候補を推して、その大胆な行動を通してオバマチームに加えられた。

オバマ大統領は、中韓日との貿易をめぐって、議会とうまく政治的な調整をしなければならない。彼が駐日大使となれば、民主党にとって重要なカリフォルニア、そして議会で“顔”であるミネタ氏が役に立つと見られている。駐日大使選びは、最終コーナーに入っている。
(ピーター・エニス =東洋経済オンライン)

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