日本社会事業大学は1958年設立。1946年、厚生省(現・厚生労働省)の委託先として設立された日本社会事業学校が母体です。厚生労働省の委託は現在も変わらず、福祉教育のモデル校です。大学の形態は私立大学ですが、実際は厚生労働省との関係が限りなく近い大学と考えていいでしょう。なお、授業料も国立大標準額と同額(53万5800円)です。
約70年間の歴史があって、福祉業界の上級職を多数輩出。そこから、潮谷義子・前熊本県知事、並木心・東京都羽村市長など自治体首長も輩出しています。つまり、日本社会事業大学は「福祉の東大」なのです。
この日本社会事業大学、2014年度の合格実績は合格率41.5%・合格者数178人。ところが、大学のサイトには「合格率63.7%・合格者数128人」とあります。「合格率41.5%・合格者数178人」は既卒を含めた大学全体での数値です。それに対して、「合格率63.7%・合格者数128人」は新卒者のみの数値です。
大学全体の合格率だと、日本社会事業大学は36位。人数ベースだと、日本福祉大学に次いで2位です。合格率の方が大学の実態を表しますが、「36位」では順位をアピールできません。そこで、「トップクラス」という言い方になったのでしょう。
合格率ベースで考えると、小規模校が有利となり、日本社会事業大学のような大規模校はどうしても不利となります。日本社会事業大学は、福祉教育を真面目にやっているところですし、「トップクラス」という文言にはウソはありません。私もこの大学は自信をもってお勧めできます。
独自データの開示が混乱を招く
一方の東京福祉大学。サイトには社会福祉士が「全国3位」とあります。ついでに「社会福祉士・精神保健福祉士合計 全国3位」という掲載もあります。ウソというわけではありません。同大サイトにも「いずれも厚生労働省報道発表資料をもとに集計」とあります。
「社会福祉士」と「精神保健福祉士合計」という別の資格試験を一緒に集計してしまうのは適切ではありませんが、数字の採り方によっては「社会福祉士 全国3位」です。これは、東京福祉大学の109人、それから東京福祉大学通信教育課程127人を合わせた数値です(ランキング表には、通信教育課程127人を含まない)。
通信教育課程はその多くが社会人であって、高卒者がすぐ進学するケースは多くありません。高卒者が中心の学部教育と、社会人出身者が中心の通信教育課程、この2つを一緒にするのも適切とは言えないでしょう。
社会福祉士の大学別合格率の平均は大学全体が25.2%、新卒者が45.4%です。東京福祉大学は大学全体(通信教育課程を除く)で19.4%、合格者数が109人。新卒者が26.6%・74人。大学の平均値より下回っていますので、「全国3位」と宣伝するほどの実績があるかは疑問が残ります。
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