「二人っ子」が欲しい!中国人のホンネと現実 ネックの教育資金は祖父母のサポートが頼り

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中国では優秀な学校が非常に限られている。大金をかけ、長年にわたる塾通いや個別指導がないと入学できない。欧米留学はもっとおカネが必要だ。英語教室、仲介機関費用、試験・申請費用、学費、生活費……。1年間30万元(約540万円)を使うのはごく普通。10年前は修士で留学する人が多かったが、近年では留学の若年化が進んでおり、高校からのケースも少なくはない。高校~大学までの7年間で計算すると、数千万円ないと厳しいことは一目瞭然だ。

このように、子供に良い教育を受けさせようとすると高額な費用が必要となるので、簡単に子供を増やすわけにはいかない。子供に苦労させるくらいならば、産まない方がよいとすら思っている。

祖父母4人+親2人で力を合わせる

先の北京の若い夫婦に、年収半分を幼稚園費用に充てたら生活はどうするのか、海外旅行にいく余裕があるのかと尋ねると、「幼稚園費用は祖父母が出してくれるので、経済上は問題がない。実はそろそろもう一人の子供を作りたいと考えている……親の支援があるので本当に助かる」という。

このように、祖父母が「大活躍」する話は、中国ではまれではない。定年後、共働きの子供の代わりに孫の世話をする人が非常に多い。毎日の食事の世話をしたり、(自分なりに)しつけたり、一緒に遊んだり、寝かせたりすることで、実質上、本当の親より子供のことをよく知っているので愛情も強い。また、大手国有企業などで働いていたとしたら、定年後の収入が自分の子供の給料と変わらない可能性もある。

つまり、祖父母4人+親2人で力を合わせれば、子供2人にエリート教育を授けられる可能性が高くなるわけだ。このような、日本ではなかなか想像できない子育て体制が、特に都市部では一般化している。

心の底では二人っ子が欲しいと思っているが、教育費のことを考えて二の足を踏んでいる中国人。これから二人っ子化が進むかどうかは、祖父母の負担力に大きく依存している。

劉 瀟瀟 中国若者富裕層ビジネスコンサルティング 代表

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りゅう しゃおしゃお / Xiaoxiao Liu

「中国・北京市生まれ。外交学院卒。東京大学大学院修士課程修了。メガバンク中国法人、大手シンクタンクなどで勤務。2019年7月~20年8月カリフォルニア大学サンディエゴ校国際政策・戦略研究大学院客員研究員。首相官邸観光戦略実行推進会議有識者など政府委員を務め、情報発信実績を多数有する。日本と日本企業の国際パフォーマンスの向上に貢献するために、①日本・中国を中心とした生活者行動②中国人向けマーケティング③日米中のヘルスケアイノベーションについて研究・コンサルティングをしている。趣味はグルメ

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