【産業天気図・非鉄金属】非製錬の成長に期待だが、銅鉱石購入条件悪化で業績ピークアウトは必至か
直近数年の好業績から徐々にピークアウトへ。2008年度の非鉄金属業界に対する見方に、従来までと大きな変化はなく、08年度前半・後半とも「曇り」模様となりそうだ。ただ、極端な減速となるか、あるいは歴史的には高水準な業績を維持することになるか、金属相場の動向次第で不透明さは増している。
非鉄各社の業績がピークアウトへ向かっている背景には、世界的な資源メジャーの台頭がある。06年のエクストラータ(スイス)によるファルコンブリッジ(米)買収、ヴァーレ(ブラジル、前リオドセ)によるインコ(カナダ)買収、07年のリオ・ティント(英・豪)によるアルキャン(カナダ)買収など、ここ数年、世界の非鉄産業は5大メジャーへの集約・寡占化が一層進展している。
こうした状況の中、海外の資源メジャーから鉱石を購入し自社で製錬する「買鉱型製錬」が主流の日本企業は、寡占化によって発言力を強めたメジャー相手の価格交渉で年々不利な条件をのまされ続けている。なかでも、多くの企業の主力金属である銅に関しては、08年分の価格交渉で製錬側の加工賃が前年比25%減で決着。これまで慣例とされてきたプライス・パーティシペーション制度(相場変動に伴う利ザヤ分配制度、以下PP)もなくなっており、製錬事業の「旨み」は縮小の一途をたどっている。
ただ一方で、主要生産国の電力不足等による供給不安や投機資金の再流入などを材料に、金属相場の国際指標であるLME(ロンドン金属取引所)価格は軒並み上昇している。PPがなくなったとはいえ、一部取り引きでは相場上昇が製錬側のプラスに働く契約も残されており、「銅価格が1ポンド当たり400セントを超えてくれば、購入条件悪化が帳消しになる」(非鉄大手)可能性もあるという。ただ、投機筋の動き次第では市況が大幅に変動することも予測されるため、先行きは好悪両面で不透明だろう。
製錬事業の状況改善が見込みにくい中、非鉄各社は非製錬への事業展開に注力している。三菱マテリアル<5711>は、好調な超硬工具や多結晶シリコンの増産に着手。08年度は伸銅品の子会社2社を統合したことによるシナジー効果なども期待できそうだ。一方、TABテープなど電子材料への特化を進めている三井金属<5706>は、アジア品との価格競争で数量・単価ともに苦戦が続いている。世界市場での企業淘汰にはまだ時間がかかりそうで、08年度中の業績急回復は望み薄だろう。
08年度の非鉄金属業界は、製錬事業が転換点を迎える中、金属市況と非製錬事業の動向が各社の業績を大きく左右しそうだ。
【猪澤 顕明記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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