(第25回)2010年卒の新卒採用の現状を「最新の調査結果」と「8カ月前の展望」の両面から検証する

 2010年度の新卒採用について、8か月前の展望に照らし現状を解説として書き加える形でここまでレポートを進めてきた。
 では、就職環境が一転した今、「質の高い学生」を採用したいと考える企業が事務系よりも技術系にその矛先を向かわせているのか。それの考え方を示すのが図cだ。

【図c】採用担当者が質の低下を感じる大学グループ
採用プロドットコムが昨年末から今年初めにかけて採用担当者に行った調査で、「“学生の質の低下を感じる”と答えた企業に“学生の質の低下を感じる”大学層は以下のいずれですか」という設問を実施。複数回答の結果を集計したもの。
 すべての大学グループで「事務系よりも技術系の学生の方が質は低下していない」と感じている採用担当者が多いことがわかる。また、大学グループ別の比率は入学時点の偏差値が学生の質(基礎能力)に影響があると考えられていることも明らかにしており、仕事経験のない新卒市場で偏差値を人材の質とする評価軸はある程度の正当性を持つと結論づけざるをえない結果となった。
 グラフには示されていないが、解説を加えておくと、企業規模別で特に「学生の質の低下を感じている」との回答が目立ったのは、従業員1~100名と1001~5000名の規模の企業だった。しかし学生の質に対するストレスは特定の大学ゾーンに集中することはなかった。
 このことは旧帝大クラスや上位私大の学生であっても中小・中堅企業と接触しており、対する中小・中堅企業側も大学名に浮かれることのない対応をとっていることを意味する。大手企業が採用を絞り込む景気後退期を好機ととらえ、優秀な人材の獲得を目指す中小・中堅企業は社会にとっても貴重な存在である。また、大手に比べて人件費が占める割合が高いからこそ、シビアに人材を見極めようとする中小・中堅企業の姿も少数・厳選採用という時代の流れを捉えた姿勢だといえる。
 一方の学生側だが、各大学ゾーンにまんべんなく中小・中堅企業群を視野に入れた就職活動に取り組む層が存在していることは、企業研究の視野の広がりを感じさせるとともに、懸念されるミスマッチについては良い傾向が見える。

 採用数を絞り込むなかでも大手製造業は理工系重視の「ターゲット採用」の路線を崩してはいない。2~3月と採用選考が進むにつれ、大手企業の採用数が減っているにもかかわらず、「2009年度とほとんど手応えは変わらない」「フォローの風を全然感じない」という準大手以下の採用担当者の感想を聞くことが多いのは、ターゲットを絞り込んだがゆえに、より密度の濃いコミュニケーションを心がけている大手企業の存在感が影響として出てきている証なのだろう。
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