日米で違いすぎる「反緊縮財政」を巡る議論 大御所が見る米国経済「利上げ後」のゆくえ

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先に口火を切ったのは、フェルドシュタイン教授。フェルドシュタイン教授は、失業率が5%まで下がった今日の米国経済では、今後はむしろ累増した政府債務が重荷になることを強く懸念した。米国も高齢化に伴う医療費の財政負担の増大が予想され、経済成長が高くても、政府債務対GDP比は上昇すると見込まれる。過大な政府債務それ自体が、マクロ経済に4つの悪影響を与えると指摘した。

政府債務対GDP比の上昇を食い止めるには

第1に、債務の利払償還のための税負担が経済活動を萎縮させ、経済全体に非効率なコストを課すこと、第2に米国債は半分以上が海外保有なので、その利払いにより米ドルが国外に流出してドル安を誘発し、交易条件の悪化を通じて米国民の生活水準を低下させること、第3に債務の利払償還費が財政を硬直化させ、景気後退期に機動的な財政支出の余地を狭くしたり、国防費を圧迫して安全保障上の問題に対処できなくしたりすること、第4に民間から供給された資金に対し、政府債務の需要で民間の資金需要を押しのける(クラウディングアウト)ため、民間の設備投資や所得を抑制すること、である。

政府債務対GDP比の上昇を食い止めるには、歳出削減と増税の双方が必要であると、フェルドシュタイン教授は説く。歳出削減については、年金支給開始年齢引き上げを始めとする社会保障給付の抑制を挙げる。増税については、累進課税の強化は経済活動を萎縮させるため反対する。他方で、キャピタルゲイン税とガソリン税の強化や炭素税の導入を主張した。

ちなみに、米国には日本で言う消費税(付加価値税)が存在しない。存在するのは、州政府や地方政府によって(生産・卸売段階では課税されず)小売段階のみ課税される小売売上税だけである。小売売上税と付加価値税は似て非なるものである。州政府や地方政府が小売売上税をすでに課しているから、連邦政府で消費税(付加価値税)を検討するには、連邦政府と州政府の課税権争いを克服しなければならない。米国で消費税に議論が及ばないのは、ただそれだけが理由である。米国の経済学者も、消費税の利点をよく理解している。

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