マタハラ裁判、高裁が下した衝撃判決の中身

一審での勝訴はなぜ大きく覆ったのか

3点目の焦点は、就労時間中に作った私的メールだ。証拠として提出されたメールの一部は以下。

「早くあの場から去りたいですが、辞めると交渉権を失ってしまうので、会社の敗北をしかと見届けるまで、戦います。(略)引き続き、報告はさせてくださいまし。ひひ^^」(2014年12月10日)

「今、「マタハラ」が脚光を浴びていること。提訴し、記者会見をすることで、裁判には前向きです。(略)早期解決を図るため金銭的和解に応じるのであれば、800万円。その金額以下で、裁判を避けることは考えておりません。提訴することが決まり、会社名を公表した記者会見をし、その後、和解、という流れで、会社に対して、十分な社会的制裁を与えることができれば、800万円という金額にはこだわりません。

会社は、裁判というより「記者会見」を嫌がるでしょう。「記者会見」を避けるために、こちらの言い値を支払うこともありえると思っています。(略)『800万or提訴&記者会見』という私の意思をお伝えいただけますと幸いです。」(2015年6月6日)

一審では、このメールはあくまで女性の内心を労働組合関係者や弁護士に向けたもので「信頼関係を破壊するものではない」という判断だった。女性側の高裁準備書面でも「自分用の備忘録であって第三者に送信されたメールではない。あくまで内心の問題」と主張していたが、高裁判決では、その他の私的メールのやりとりも含め「職務専念義務に違反した」に変わった。

最高裁の判断は?

高裁「結審」の日、杉村社長はこれらのメールを会社のパソコンから発見した2015年7月11日のときのことを「胸をえぐられる気持ちになり、信頼できなくなった」と陳述していた。そして7月末に「雇用期間満了通知書」を女性に送り、9月1日の雇用期間の満了に至ったと経過を説明した。

二審の判決文書は、一審判決より約20ページ多い合計103ページに上った。「録音行為、マスコミへの事実と異なる情報提供、メール作成だけでも、会社側との信頼関係を破壊する行為に終始し、かつ反省の念を示していない」ことで、雇い止めには合理的な理由があると認められた。

さらに判決文では「一審原告自身が、マタハラが脚光を浴びているとして、記者会見を一審被告に社会的制裁を与えて自己の金銭的要求を達成するための手段と考えている」と厳しく断じている。

判決が出た日、厚生労働省内にある記者クラブで両者とも記者会見を行った。杉村社長は、「20人規模の会社で、できる限り力を尽くし、子育て中の社員が辞めないで就業継続できるようサポートした。それをマタハラと言われて苦しかったが、判決でしっかり認められて安堵している」と心境を語った。

一方の女性は「会社が作ったワナに落とされたような気持ちで、5年経った今でも暗闇から抜け出せない」と、最高裁に上告する意向を示した。

最高裁の判断が注目される。

(労働経済ジャーナリスト/小林美希)

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