深刻な外資系銀行の危機に万全な準備を急げ、破綻、撤退への対応策
スイスのバーゼルにあるのが国際決済銀行、俗に言うBISである。
その中に75年に設置されたバーゼル銀行監督委員会が、発足間もない同年9月に「銀行の海外拠点の監督上の原則」として公表したのが「バーゼルコンコルダット」と呼ばれる基本ルールだ。クロスボーダーで活動している銀行が不測の事態に陥った際の当該銀行の母国当局と、海外拠点のある現地当局の間の責任分担についての原則を定めている。
83年3月に改定されたが、その基本内容は不測の事態が発生した際、当該銀行の資本については母国当局が責任を負う一方で、海外拠点の流動性については現地当局がモニタリングするということになっている。
要するに、母国当局はソルベンシーの維持に努めるとともに、各現地当局は当該銀行のその地における資金繰りの面倒をみるということになる。国際展開しているような有力銀行が危機に陥れば、その影響の大きさからして、当然の対応だろう。
しかし、これはあくまでも原則にすぎない。実際はそんな状況が起きないことがベターだし、ひとたび発生した場合、分担割り当てどおりに、円滑に事が進むかどうかも心もとないというのが現実的な感覚だったようだ。そこで、拠点進出している現地からは厄介払いのような撤退要望の声が上がらざるをえなくなった。90年代に大手邦銀ですら、冷たい扱いを受けたのは、以上のような事情もあったからだという。
ひるがえって今、わが国には欧米の銀行が数多く進出してきている。中には、経営悪化で半ば開店休業状態の銀行もあるが、それなりにビジネスを継続している銀行は少なくない。
しかし、たとえば、シティグループのように公的関与が強まれば、一般的には資産査定は数段厳格化されていく。
それがグローバルベースで行われるようになると、どうなるのか。ある大手邦銀の幹部によると、「それまでは母国の本部が把握してなかったような海外拠点の問題資産がドッと現れ出てくる」のだそうだ。その結果として、海外拠点では混乱が引き起こされかねず、バーゼルコンコルダットで定められた責任の執行が迫られる可能性も増す。
しかし、それだけで済まされるのかどうか……。