児玉正之・あいおい損害保険社長--気持ちは一つになったが、今後の再編交渉には難題も
--3社の中でのあいおい損害保険の位置づけは。
自動車保険の損害率は、あいおいが日本国内でいちばん低いのですが、逆に三井住友海上(MSI)とニッセイ同和は非常に高い。個人的に試算してみたのですが、たとえばあいおいとニッセイ同和の損害率格差は10%以上もあります。なので、あいおいの損害調査サービスや保険引き受け、損害防止サービスなどさまざまなノウハウを活用し、ニッセイ同和の損害率をあいおい並みに低下させることができれば、単純計算で前2008年3月期に124億円だったニッセイ同和の純利益は、185億円くらいになる計算です。
一方、MSIの自動車保険の売上高(保険料収入)は5000億円程度。MSIの損害率も70数%と高いので、あいおいとノウハウやシステムなどを共有できれば、単純に計算しても損害率1%の低下で50億円近い利益が出せるのです。
逆のケースもあります。たとえば日本の海上保険は上位数社でほぼ寡占されています。あいおいの海上保険の種目の取扱高はたかだか100億円程度と、細々としたものです。しかし、その100億円を取るためにいろんな仕組みをそろえる必要があります。要はお客様が海上保険をカバーできればいいのですから、極端な話、全部、MSIから提供してもらうことも考えられます。
ただ、経営統合や合併のハードルはかなり高い。この1年は統合作業の一方で、市場環境は非常に厳しくなると見ています。現場の社員一人ひとりにとっては、時間との闘いだけでもすごく苦しくなると思います。そこでわれわれが節目、節目をとらえて、夢やビジョンを語り、メッセージを流し、情熱を一つにしていく。それが経営統合・合併に向かうエネルギーの源になると信じています。そういうことをきちんとやれば、どんなにハードルが高くとも越えていける、と思っています。
--システムのあり方が経営統合の肝になりそうです。
旧千代田火災と旧大東京火災が合併したとき、思い切ったシステム統合をしたのですが、しくじってしまって、逆にえらいおカネがかかった。システム投資は削減メリットがある一方で、方法を間違えるとコストが増えるリスクも抱えています。個人的には、うまく時間をかけていい方法を探っていくのがいいと思っているんですが……。システムは無理して一挙に統合しなくとも、安全策を取りながら進めれば、少しずつでも効果は表れると思います。
あいおいは第1回戦で失敗した代表選手のような会社。MSIにしてもニッセイ同和にしても、第1次再編のときに、うまく再編を乗り切ったのであんまり危惧を抱いていないようなんです。だから、そこが今後の交渉では難しいところだなぁと思っています。気持ちは一つになったが、一緒に仕事を始めたらケンカをしていた、ということがないようにしていくつもりです。
こだま・ただし
1970年同志社大学法学部卒、旧大東京火災入社、00年執行役員就任、01年に旧大東京火災、旧千代田火災合併に伴いあいおい損保取締役就任。02年常務、03年専務等を経て、04年4月より現職。
(筑紫祐二 =週刊東洋経済、写真:今祥雄)
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