意外?大型連休の宿泊料が高い「本当の理由」 需要と供給の問題ではなかった!

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人件費などの固定費は、付加価値を生み出す源泉です。固定費(人件費など)をアップすれば、従業員のモチベーションが上がって、今後の付加価値を生みだす源泉になることでしょう(付加価値の一部が利益になります)。逆にいえば、従業員への利益還元を省略し、会社の利益アップだけを考えると、従業員のモチベーションは下がって、付加価値を生み出すことができないでしょう。ブラック企業で見られる現象と同じです。「固定費を削減して利益を増やす」という単純な発想では、利益を生み出せないことに気づいてください。

高価格の正体は、機会損失だった

もし価格を転嫁できなかった場合は、失った売上高48万円から得られたであろう限界利益(付加価値)38万4000円だけ、管理会計上の営業利益は減少します。この38万4000円を管理会計では機会損失(チャンスロス)と呼びます。実際の損失ではないので、経理部門などでは計算しませんが、価格の設定などの意思決定の場面では、役に立つ考え方です。

もうおわかりかと思いますが、機会損失を回避することができれば、機会損失は現実の利益となります。したがって、経営にとっては無視できないわけです。

機会損失は、いろいろな場面で発生します。欠品(在庫を切らすこと)や接客力の不足、生産能力を超えた注文増などで発生します。いずれも本来現実の売上高になるはずが、実際は売上高が減少し、結果として得られたはずの限界利益が減少します。

この限界利益の減少額が機会損失です。お正月期間中の宿泊代が高くなるのは、機会損失をカバーするための苦肉の策だともいえるのです。

千賀 秀信 計数感覚・養成コンサルタント

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せんが ひでのぶ

マネジメント能力開発研究所代表。早稲田大学商学部卒業。中小企業診断士。

公認会計士、税理士専門の情報処理サービス業・株式会社TKC(東証1部)で、財務会計、経営管理などのシステム開発、営業、広報、教育などを担当。
1997年にマネジメント能力開発研究所を設立し、上場企業や公的機関などで研修を行なう。一般社団法人日本能率協会などでオープン講座を開催。

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