慰安婦問題、「最終的解決」に残る多くの疑問 「不可逆的」という約束は守られるのか

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「韓国政府が実際に元慰安婦や支援団体とどこまで協議してきたか、意見の調整をしてきたかは疑問」(韓国全国紙記者)。仮に、韓国政府が彼らとこれまで十分な意見調整がなされていれば、「ゴールポストが動く」といった声は、日本からは出てこなかったはずだ。

また「最終的かつ不可逆的な解決を確認」したとしても、韓国側がその確認を守るかどうかは疑わしい。現在の朴槿恵政権の任期も半分を過ぎた。政権が変われば政策もがらりと変わるのが韓国の政治だ。政権が変われば「当時の合意はおかしかった」と、外交の一貫性が欠如した発言が出て問題が再燃する可能性もある。

韓国は法を守ることよりも、情を優先する国民性。しかも相手が日本ということになれば、合意が継続して守られることなどありえない。したがって、今回「ない」とされた問題の「蒸し返し」も十分考えられる。

韓国以外の元慰安婦や政府から新たな要求も

合意に関する詳細な内容はこれから出てくるであろうが、日本政府の対応にも不安が残る。仮に韓国とは今回の合意で決着がついたとしても、中国や台湾、フィリピンなど、他国の元慰安婦やその支援団体、あるいは政府の動きが気になる。

すでに台湾外交部は「(日韓の)動向を把握し、台湾の元慰安婦も同様に扱うべきだとする要求を日本政府に伝える」よう、日本大使館に当たる台北中日経済文化代表処に命じたという。台湾には4人の元慰安婦が存命だ。

さらに、中国が歴史問題と絡めて新たな要求をしてくる可能性がある。また、北朝鮮からも国交正常化交渉や日本人拉致問題解決のための交渉などの場でさらなる強い要求をしてくることもありえる。これら韓国以外の国に対しても、日本側がどう対応するか。日韓関係を悪化させた懸案は、これからも、範囲を拡大して続きそうだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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