東京ガスの電気料金は、どこまでお得なのか 自由化に向けていち早く料金プランを発表

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販売に際しては、ネットや電話での契約申し込み受け付けだけでなく、保守点検やガス器具販売を担うサービス拠点の「東京ガスライフバル」などを活用したフェイスツーフェイスの販売チャネルをフル回転させる。

ただ、家庭向けなど低圧市場を独占する東京電力の牙城をどこまで切り崩せるかは未知数だ。東京ガスは「5年後に首都圏需要の1割の獲得」を目標に掲げる一方、初年度の獲得目標については「設定していない」(笹山氏)という。東京ガスの広瀬道明社長は「1割という獲得目標はたいへん厳しい」とスタート前から明らかにしている。今回の料金プラン発表に際して、NTTコミュニケーションズなどのインターネットサービスプロバイダーとの提携にこぎつけたが、シェア競争で鍵を握る携帯電話会社との提携はまだ実現できていない。

2017年の都市ガス自由化までに成果を

また、東電も近く、現行の料金とは別に自由化対応の新料金プランを発表する予定で、そこでは東京ガスが狙う電力多消費世帯を念頭に置いた価格面での対抗策が明らかにされるとみられる。ほかにも電鉄や石油販売など数十社にのぼる新規参入企業が東ガスと同様に電力多消費世帯に向けて売り込みを図るもようで、パイの奪い合いは必至だ。

経済産業省が2014年4月に実施した消費者向けアンケート調査によれば、電気料金が5%程度低下した場合に電気事業者の切り替えを志向する消費者は約半数に上るという。東京電力のエリアに限っても約1000万世帯に相当する。そこに狙いを定めた東京ガスの戦略がどこまで通用するか。

2017年には都市ガスの自由化で守勢に回るだけに、東京ガスとしてはそれまでにできるだけ顧客を囲い込んでおきたいところだろう。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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