北京市民が東京都民並みに長生きできる理由 PM2.5に立ち向かう現代中国人の養生事情
また、「医食同源」に基づいた食事を取るのも一般常識となっている。胃腸に負担をかけないように、消化に良いおかゆを日常的に食べている。したがって、手間をかけずにおかゆを作れるフードジャーが魔法瓶の次に人気となる理由もそこにある。
化粧品のような顔や身体につけるものは「外」の化学成分で、体に「毒」を塗るようものと考えている。それより、きちんと養生し、薬膳・保温・マッサージ・鍼灸・抜罐(カッピング)・かっさ等を通してデトックスし、身体の「内」から綺麗になることこそ本当の美容だと思われている。
養生思想をめぐる新しい動き
養生思想は、家族、周囲の人、マスコミ等を通して代々相伝し、中国人の知らないうちに生活や消費に影響を与えているようだ。女性はなぜか生理の日にナツメ・生姜・黒糖のスープを飲んで温まり、ホッとする。陽気(養生思想で生命力のこと)が旺盛な男性でも、なぜか冷たいビールを避ける。化粧品では「ハトムギ化粧水」が大人気だが、その理由には、中国人は「ハトムギ」という生薬に「消炎、排毒、むくみ解消」という効果があることを知っていたからに違いない。
現在、特に若い世代は西洋医学を信じる傾向が強まっており、中医学を「科学ではない古いこと」のように考える人が増えている。その一方で、教育レベルや情報収集の向上に伴い、養生思想についても新たな動きが出てきている。
一つ目は、先進国と比較しながら取捨選択するようになったことである。たとえば、以前は「子供を冷やすな」と過剰に厚着させる親が多かったが、最近では、「逆に体の耐寒力が落ちるのでは」と考え、意識的に薄着させる親も増えてきたようである。二つ目は、簡便性への嗜好である。「養生」関連のビジネスには、飲食・薬・日用品などが挙げられる。昔は数時間をかけて薬膳を作るのが一般的だったが、最近は手軽に食べられる、レトルトタイプの養生薬膳が出ている。このように、若い世代を中心に合理性の観点からの見直しが進んでいる。養生思想にかかわる領域で、新たなビジネスチャンスを見出すことは十分可能だろう。
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