精密装置支える「はんだ付け日本代表」の底力 アドバンテストの品質は「人の手」が生み出す

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不良を見分け、微妙な修正を施す必要がある作業のため、十分に経験を積んだ作業員しか担当することはできない。佐々木さんも「部品をひたすら基板に接着する『手実装』と呼ばれる工程で経験を積み、外観検査を担当するようになった」と話す。

接着する部品の大きさは、肉眼で見えないほど小さいものもある。そのため、はんだ付けも、部品をピンセットの先につけ、顕微鏡をのぞき込みながら行う。溶かすはんだの量が多すぎると、電気が別の回路に流れてショートしてしまう。少なすぎると部品が基板に接着しないため、過不足なく、はんだを溶かさなければならない。

また、溶けたはんだの形も、山の裾のように滑らかな曲線を描くのが理想だという。そうすることで、電気信号が正確に流れ、部品も強固に接着することができる。

品質を支える、社員の技術力

現在の主な業務は検査だが「本当は部品をつけている方が楽しい。キレイな基板が出来上がったときは最高」と佐々木さん。日頃から非常に緻密な作業をこなしているので、大会でも実力を十分に発揮できたのだろう。

2016年3月には、米ラスベガスで世界大会が開催され、佐々木さんは日本代表として参加する。世界王座は、アメリカ、EU、中国、東南アジアなどさまざまな国の代表によって争われる。「世界大会は品質が高いのは当然で、スピード勝負になる。絶対に優勝したい」。

実は、日本大会の準優勝者もアドバンテストの社員だった。製造業の中でも、より高い技術力が求められる半導体製造装置メーカー。その品質を支えているのは、こうした社員たちの技術と努力なのだ。

東出 拓己 東洋経済 記者

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ひがしで たくみ / Takumi Higashide

半導体、電子部品業界を担当

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