三井物産が融資契約結んだチリ銅公社と資源メジャーの係争決着(2)単なる銅権益取得よりコデルコとの戦略的提携に大きな意味
コデルコ(チリ銅公社)と英資源メジャー、アングロ・アメリカ(AA)と間での、AA子会社アングロ・アメリカ・スール(AAS)を巡る係争が解決した。AASの新しい株主構成はAA50.1%、アクルクス29.5%(アクルクスへの出資比率はコデルコ83%、三井物産17%)、三菱商事20.4%となったが、三井物産にとってはこれが終わりではない。
三井物産はコデルコに対し、AAからのAAS株式24.5%買取資金として、19億ドルを融資した。年内にもコデルコにこのうちの9億ドルを長期融資に切り替えるよう提案する。コデルコがこれに同意すると、三井物産はコデルコからアクルクス株式15.25%を10億ドルで取得し、コデルコはその10億ドルを三井物産に返済することになる。結果としてアクルクスの株主構成はコデルコ67.75%、三井物産32.25%で、これをアクルクス唯一の資産であるAAS株式に引き直すとコデルコ20.0%、三井物産9.5%となる。一連の流れを三井物産の立場で整理すると、21億ドルを投資しコデルコとの合弁アクルクスを通じてAAS株式9.5%を取得する一方、AAS株式20.0%を保有するコデルコに9億ドルを融資、となる。
AASの年間生産量は40万tなので、9.5%を取得しても三井物産の持分権益は3.8万tと三菱商事の半分以下という計算になるが、コデルコと包括的戦略提携を結んだ一環として、AASに対するコデルコの持分も引き取る権利を得た。つまり自社分も含めてAASの生産量の29.5%に当たる11.8万tを販売できることになった。
そして、この包括的戦略提携はAAS案件にとどまらない。今後両社は、銅、銅の副産物であるモリブデン、リチウムなどの鉱山分野、鉱山機械、タイヤ等の関連分野で新規案件を目指し、また、国内に事業が集中するコデルコの海外展開に三井物産が協力する、としている。
三井物産にとって銅は、鉄鉱石と同じくらい重要な金属資源だ。鉄鉱石では世界生産量1位のブラジル、ヴァーレというパートナーがいるが、銅の世界でそれに匹敵するのはコデルコをおいてほかにない。もともと両社は1970年代の融資買鉱(三井物産から借りた資金をコデルコが銅で返す)以来の付き合いがあり、今回の一件を通じて関係がより深まった。単なる銅権益の取得より、コデルコと長期的な提携で合意できたことのほうが、三井物産にとっては大きな意味がある。
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