【産業天気図・証券業(ネット専業)】「曇り」予想は変わらず。サブプライム問題の余波が続く

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ネット専業証券各社の業績が伸び悩んでいる。総じて相場がさえなかった2006年度に比べて、今年7月下旬までの株式市況は堅調だった。だが、8、11月に相次いで株価急落を招いた米国のサブプライムローン(信用力が低い個人向け住宅融資)問題に悩まされ、個人を中心としたネット投資家の投資意欲は減退ぎみ。ネット専業証券業の天気予測は、前回同様、07年度後半、08年度とも「曇り」とする。
 日経平均株価は今年2月の中国発世界同時株安後、新年度入りを挟んで上昇。6~7月には1万8000円台に乗せるなど堅調な展開だった。が、サブプライムローンの焦げ付き問題をきっかけにして世界的な信用収縮が発生。株価は一気に1万5000円台前半まで下落した。株価急落による信用取引の追い証発生などで、日本の個人投資家も打撃を受けた。この「サブプライム・ショック」以後の東京株式市場は軟調な展開が続き、ジャスダック、東証マザーズ、大証ヘラクレスといった、ネット投資家に人気が高い新興市場も軒並み低調。ネット専業証券が主要な収益源とする株式委託手数料収入はおおむね弱含みで推移した。
 ネット専業証券各社の07年9月中間決算は、上場4社のうち、松井証券<8628>、SBIイー・トレード証券<8701>が増収増益、マネックス・ビーンズ・ホールディングス(MBH)<8698>、カブドットコム証券<8703>が減収減益となった。
 その後、投資家のリスク許容度は徐々に回復に向かったが、11月に入り欧米主要金融機関でサブプライム関連の追加損失が相次ぎ明らかになると、再び日経平均は急落。11月21日には年初来安値1万4837円まで突っ込んだ。
 足元の株式市況は落ち着きを取り戻しつつあるが、株式委託手数料収入の弱含みは続いている。サブプライム問題を材料に、株式市場から再び資金が逃避する懸念も払拭されていない。ネット専業証券は、投資信託や外国為替証拠金取引(FX)、日経225先物取引など、金融商品の拡販を進めているが、各社とも主力となる現物株の委託手数料収入に代わる収益の柱となるほどには、育っていない。
 『会社四季報』08年新春号(08年第1集)予想では、今08年3月期の見通しについて、前号(秋号)で減益予想に減額したMBHの減益幅を拡大。残り3社については従来予想を据え置いた。
 ネット証券各社をめぐっては、再編の火種がいくつかある。
 1つは日興コーディアルグループ(CG)<8603>が出資するMBH。07年春のTOB(株式公開買い付け)成功で、米シティグループ入りした日興CGは、08年1月に国内初の三角合併方式による株式交換でシティの完全子会社となる。マネックスの松本大社長は、日興CGがシティ傘下入りする前後から、新たな提携先を模索していることをコメントしており、同社の出方によっては、他のネット専業大手との再編に発展する可能性もある。
 松井証券は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)<8306>との資本提携交渉を年初から継続している。MUFGはグループ内のネット専業証券のカブドットコム証券への出資比率を07年4月に40%超まで高めたが、同12月19日を期限とするTOBで50%超まで比率を高める予定。MUFGと松井証券との提携が実現すれば、松井−カブドットコムの連携の可能性が浮上するかもしれない。
 このほか、SBIイー・トレード証券は、10月に同じSBIホールディングス<8473>グループ企業で、対面取引主体のSBI証券と合併。対面営業の要素を採り入れた新たなネット証券の姿を模索している。
 非上場の楽天証券ホールディングスや、野村ホールディングスグループのジョインベスト証券なども含めた今後の動きも注目される。
【武政 秀明記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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