ファッション誌トップシェア、宝島社の女性誌マーケティングの秘密(中)--実演販売、アウトレットまで多様な書店応援策
電子書籍やネットメディアの台頭、少子高齢化などで構造不況業種とも言われる出版業界。そんな不況下にあって、異例の好調ぶりを見せるのが宝島社。好調の秘密はどこにあるのか、マーケティング本部部長の桜田圭子氏がそのノウハウを明かす。その2回目。
来店を促す書店応援キャンペーン
宝島社では、出版流通こそが自社の財産だと考えている。日本の出版流通は非常に優れている。特に書店は、駅前などの一等地に立地していることが多く、老若男女を問わず幅広い集客力があり、書店にコンビニエンスストアを合わせると、全国に約6万店舗という販路を活用することができる。
その出版流通を通して、多くの人が求める魅力的な商品を提供することで、書店に新しいお客様が増え、書店に活気が生まれることが、出版業界全体の活性化に繋がるのである。普段、本や雑誌をあまり購入しない層にいかに書店に足を運んでもらうか、現在はその施策に力を注いでいる。
宝島社では、「書店応援キャンペーン」を08年から実施している。これは、書店のお客様にとって魅力のある商品やサービスを提供し、書店員さんやお客様に喜んでいただくことはもちろんのこと、書店や書店のスタッフを盛りあげ、店頭活性化や書店の販促に繋がるさまざまな企画を提案していくというものである。
たとえば、『sweet(スウィート)』がファッション誌日本一の部数に到達した09年4月には、書店員さんや取次担当者を印刷工場見学へ招待し、「日本一のsweetが作られる現場を見に行こう!印刷工場見学ツアー」を実施した。書店員さんに『sweet』への愛着や知識を深めてもらうことで、売れることを実感して、より販売に力を入れてもらうことが狙いだ。編集長との交流の場や『sweet』にまつわるクイズ大会などを実施し、自信を持って販売に繋げてもらった。さらに参加者のサプライズを喚起するため、集合場所からの移動には大型のリムジンを用意した。イベント後には書店からの追加注文から相次いだ。
ブランドムックで流通の強みを生かす
現在の主力事業に、『ブランドムック®』(※)がある。『ブランドムック』とは、人気ファッションブランドの商品や歴史、デザイナーのインタビューなどの情報を掲載したムックに、ブランドのショップでは販売していないバッグやポーチ、小物などがセットになった出版物である。ファッションブランドだけでなく、コスメ、キャラクターブランド、飲食店やアートなどのブランドとコラボレーションし、05年の創刊以来、新しい市場を開拓し続けている。スタート当初は、ファッション誌で付き合いのある国内のブランドが主であり、海外ブランドなどは少なかったが、次第に実績やクオリティを認めてもらえるようになり、アプルーバルが取れるようになって行った。
※ブランドムック®は宝島社の商標