追い込まれるシャープ、5000人の大リストラ
「一刻の猶予も許されない」。8月2日に都内で会見したシャープの奥田隆司社長は苦渋の表情を浮かべた。
これまで「雇用は守る」としてきたシャープが、大規模リストラに踏み切る。社員5万7000人を希望退職などで2013年3月末までに5000人削減。液晶テレビ「アクオス」を生産する栃木工場、太陽電池の葛城工場(奈良)は規模を縮小し閉鎖も検討する。これらの構造改革で固定費を1000億円低減する。
同日に発表した2012年4~6月期決算は前年同期比約3割の大幅減収で、最終赤字は1384億円と2・8倍になった。過去最悪、3760億円の最終赤字を計上した前12年3月期よりもスタートは悪い。売上高の7割を占める“看板”の液晶事業に、底入れのメドがつかない。
堺だけでなく亀山も
前期に大赤字に転落した原因は、09年秋に稼働した堺工場だった。
この世界最大、最新鋭の液晶パネル工場は、昨夏以降、外販戦略の失敗で5割の減産を余儀なくされた。3月末時点で5カ月分の在庫を抱えており、巨額減損リスクの懸念があった。
この4~6月期には堺の稼働率を3割まで落とし、サムスン電子向けに40型のテレビ用パネル約100万台分を売るなどして約400億円在庫を削減。「足元を見られた結果、(4~6月期の)サムスン向けは赤字」(関係者)。
シャープは3月、EMS最大手、鴻海精密工業(台湾)に救済を仰いだ。まもなく鴻海グループが669億円を出資し、シャープ株の10%弱を握る筆頭株主になる。7月には鴻海の郭台銘董事長が堺工場の株式の46・5%を660億円で買い取った。
堺工場の主導権を握った郭董事長は、トップ営業を敢行。ヒューレット・パッカードやデルなどに売り込んだタッチパネル付きPCモニターは「提示した価格が高すぎた」(関係者)ため、成約に至らなかったが、鴻海と関係の深い米VIZIO向けには60型テレビ用パネルを受注した。7月中旬から堺工場で生産が始まっている。