保険の「テラ銭」は公営ギャンブルよりも高い 競馬、競輪よりも胴元がたくさん抜いている

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では、今後、日本の保険のテラ銭は安くなっていくのでしょうか。

日本よりテラ銭の安い米国でも、やはり保険は高い買い物

テラ銭を引き下げる最大の圧力は競争原理です。たとえば、競争のない公営ギャンブルと違い、絶えず競争している街のパチンコ店のテラ銭は10~15円程度と言われています。公営ギャンブルと比べるとずいぶん安くなります。

それでは、日本よりはるかに競争の激しい米国の状況を見てみましょう。

カジノが立ち並ぶラスベガスでは、テラ銭は平均するとざっと5円程度のようです。ギャンブルに興じるお客から見て、納得できるギリギリの水準まで引き下げられています。

保険でも米国は競争が熾烈です。経費をいかに安くするかで競い合っています。経費を切り詰め、その分保険料を安くして価格競争に打ち勝たねば生き残れません。2012年の米国財務省のデータによると全米損害保険会社の還元率は約75%です。支払われた100円の保険料の内、75円が保険金や給付金で消費者に還元されたという計算です。つまり、残りの25円がテラ銭という勘定です。すでに述べたように日本の損保のテラ銭は38円ですから、米国の方が13円安いことになります。

生命保険の方はよいデータがありません。ただ、米国でも損害保険と同じ水準か、やや高めであろうと推測することができます。つまり、25円+アルファです。このように、競争によって保険のテラ銭はここまで安く引き下げられるのです。

それでも、米国の消費者は「保険会社はまだ儲け過ぎている」と批判しています。たしかに、日本と比べて安いと言っても、まだ25円以上のテラ銭を取っているのです。消費者の目には、テラ銭を引き下げる経営努力がまだまだ足りないと映るのでしょう。

ただ、どれほど保険会社が頑張っても、ラスベガスのカジノ並みに5円という水準まで引き下げることは難しいでしょう。これが保険とギャンブルの違いです。保険はカジノのようにお客が自分から集まってくる商品ではありません。どうしても一定の営業コストがかかってしまいますから、保険にはどこかに引き下げの限界があるのです。

日本も規制緩和により保険会社間の競争が一層激化しています。遠からず、米国並みの水準に近づいてくることでしょう。しかし、依然として保険が高い買い物であり続けることは変わりありません。
それでも、必要な場合はどうしても入らざるを得ないのが保険です。せめて本当に必要かどうか、よく吟味してから入るようにしたいものです。

橋爪 健人 保険を知り尽くした男

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はしづめたけと / Taketo Hashizume

1974年東北大学卒、1984年米国デューク大学修士。日本生命保険に入社後、ホールセール企画部門、米国留学、法人営業部門を経て米国日本生命副社長。帰国後、損保会社出向、ジャパン・アフィニティ(保険ブローカー会社)代表取締役を経て2004年独立。企業向け保険ビジネスのコンサルタントとして活動。著書に『日本人が保険で大損する仕組み』(日本経済新聞出版社)

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