イギリスは「テロとの百年戦争」の最中にある ロンドンは、ずっと過激派の標的だった
イスラム過激派から最も狙われる航空会社はイスラエルの国営エル・アル航空だが、過去テロに遭ったという話は聞かない。同社は、他の航空会社がX線検査で済ませる乗客のスーツケースをすべて開け、中身を1つ1つチェックする。そして「なんの目的でイスラエルに行くのか?」「パスポートにアラブの国の入国スタンプがあるが、何をしに行ったのか?」「ロンドンのどこに住んでいるのか?」「航空券の発券日が10日前だが、なぜ最近になって買ったのか?」「アラブ人の友人はいるか?」等々、30分くらい執拗に訊かれる。
出発ラウンジの入り口でも、同様の検査と質問が再びあり、前のときと違う答えをすると、別室に連れて行かれる。もちろんアラブ系の名前の乗客に対するチェックは一段と厳しい。
機内には私服でがっちりした体格の「エアマーシャル」(武装保安員)が乗っていて、拳銃などを入れたスポーツバッグを膝の上に載せ、客室全体が見える座席にすわっている。
航空機ファイナンスの専門家に訊くと、同じ機種でもエル・アル航空の飛行機が一番値段が高いそうである。貨物室は爆発があっても耐えられるように装甲が施され、誘導ミサイル欺瞞装置などを備えているからだという。
2001年9月に米国で起きた同時多発テロの後、世界中の航空会社がエル・アル航空の門を叩き、テロ防止のノウハウを学んだと聞く。
イギリスの情報機関、SISとMI5
個人でできるテロ対策は多くなく、テロ防止活動の主体はどの国でも政府が担うべきものである。英国は20世紀初頭から新興国ドイツの軍事力に対抗しようと諜報活動に力を入れ、「007」の映画ができるほど伝統がある。
諜報活動を行っているのは、外相管轄下の秘密情報部(略称SIS、旧MI6)と、内務相管轄下の情報保安部(MI5)である。前者は2,000人を超える職員を擁し、海外での諜報活動を担い、後者は約4000人の職員を擁し、スコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)等と連携して国内のテロ対策に当たっている。
日本には内閣情報調査室や公安調査庁があり、外務省内に国際テロ情報収集ユニットも発足したが、組織は脆弱かつ役人的で、アラブ人をスパイにリクルートするなど、ダイナミックな諜報活動を行っている英国の機関とは比べものにならない。
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