サムスンが女性活用で韓国の先頭に、社会を変えた李会長の決断

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オーナーの鶴の一声で、営業や研究・技術といった「女人禁制」だった職種で女性の採用が始まった。さらに、男性と同じ業務と責任を与え、昇進・給与でも同じ待遇とすることにした。

こうした措置に、サムスン内部でも反発が少なくなかった。商業高校を卒業し、そろばんとコンピュータに精通した高卒女性社員が、大卒社員より低い給与で経理や庶務などを担当していた。それなのに、わざわざ大卒女性を採用する必要があるのか、という声が強まった。

サムスン電子で人事部長を務めた韓国人材戦略研究院のシン・ウォンドン代表は「女性は結婚、出産もあって、社会活動の制約が多いというのが一般的な認識だった。男性に比べると業務の成果が低いと考える傾向にあった」と振り返る。89年から3年間、サムスングループ会長秘書室チーム長だったヘラルドメディアのキ・ウェホ顧問は「李会長の強い意向で大卒女性を採用することにしたが、積極的に女性を採用するという部署や子会社がなく、半ば強制的に配置させたこともあった」と話す。

採用された女性はしだいに存在感を増すようになり、女性に対する固定観念は随分と崩れた。キ氏は「当時の社会的雰囲気や財界の現実を考えると、オーナーの決断力なくしては難しかった」と説明する。

サムスン電子では女性副社長が誕生

サムスンの動きをきっかけに、ほかの大企業も女性採用を拡大。韓国女性政策研究院のヤン・インスク研究員は「90年代前半に広がった大企業による女性採用は、熟練を要する職種に女性が進出する起爆剤となった」と指摘する。

 

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