生活保護者の増加は制度機能の証拠、多くの受給者は正直だ--帝京平成大学教授・池谷秀登

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生活保護者の増加は制度機能の証拠、多くの受給者は正直だ--帝京平成大学教授・池谷秀登

生活保護者の増加の要因は、生活保護以外の社会保障の脆弱さにある。若年層では不安定就労が広がり、高齢者の中には収入を国民年金に依存する人も多い。

逆にいえば、これだけ保護世帯が増えているのは、生活保護制度がしっかりと機能している証拠だ。餓死者の問題なども、一部では出ても社会全体で広がっているわけではない。つまり社会保障全体が生活保護に「甘えすぎている」状況がある。生活保護を軽くするならば、社会保障全体の制度作りが不可欠だ。
 
多くの受給者は正直だ

モラルの問題も一部にはあるかもしれない。ただ、ケースワーカーとして長年勤務した経験からいうと、多くの受給者は働く意欲があり、まじめで正直な人だ。また保護制度には基礎控除や特別控除といった就労のインセンティブも存在する。働いても働かなくても同じと考える人が増えているとは想像しにくい。

問題があるとすれば、ケースワーカーの負担が増えているという状況だ。ワーカーの担当世帯は社会福祉法という法律により、80世帯が標準数と定められている。しかし、現在では100世帯以上を担当するワーカーも多くいる。背景には公務員の定数削減の影響がある。10年間で公務員の数が約1割減少する中で、ワーカーを増やせない事情がある。片や保護申請は増えている。新規の処理ばかりで就労支援などに手が回らず、結果的に保護費が膨らんでしまう状況が考えられる。

生活保護は法律上の権利だが、恥ずかしくて保護を受けたくないといった国民感情も根強い。自治体も十分な広報をしてこなかった。制度をオープンにして、どういう要件で受けることができるか、正確な情報提供が必要だ。

いけたに・ひでと
帝京平成大学現代ライフ学部教授。早稲田大学大学院卒、東京都板橋区の福祉事務所でケースワーカーなどとして約30年間勤務。

(週刊東洋経済2012年7月7日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。撮影:尾形文繁
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