【産業天気図・商社】総合商社は「晴れ」が続く。遠い空に見える黒雲は近づくのか?
総合商社の07年後半から08年度の天気は「晴れ」が続く。ただ、遠くに黒い雲が見え、それがこちらに向かってくるのかどうかわからない、といった感じだろう。
2007年9月中間期は、総合商社各社は軒並み中間期としての最高純益を更新した。
業績を牽引したのは、高騰する資源関連だ。三井物産<8031>は純益の75%を資源関連で稼ぎ出した。これは、インドやブラジルの鉄鉱石や天然ガスの「サハリン2」など、保有する資源権益の多額の売却益が計上された特殊要因が大きい。とはいえ、三菱商事<8058>も51%、伊藤忠商事<8001>も42%と、他商社も資源関連で純益の多くを稼ぎ出した。原油が上期は1バレル当たり60ドル後半と、想定より高かった(ほぼ前年同期並み)うえ、銅などの高騰で権益からの利益が拡大した。
資源関連だけではなく、海外での自動車や建設機械、化学、プラント、電力事業、船舶などの非資源事業も全般的に利益を増やした。ただし、こうした非資源事業も、資源高で潤う新興国の需要増に伴うものや、資源の開発や運搬などを含むため、広い意味では資源関連の恩恵という面はある。
米国のサブプライム問題(信用力の低い個人向け住宅融資の焦げ付きを発端とする信用収縮等)の影響は、現時点ではほとんど出ていない。一部、米国での住宅事業にとっては懸念材料だが、全体に影響を与える規模ではない。むしろ、サブプライム問題をきっかけに原油高が加速したことで、収益的にはプラスに働いている。円高の進行はマイナスだが、現状の1ドル110円前後なら原油高の好影響のほうが勝るだろう。
米国経済の減速が深刻だと、それなりの影響は避けられない。さらに資源価格の暴落や新興国経済の減速につながれば、総合商社の業績が下振れする可能性はある。が、そこまで悲観的なシナリオを描く圧倒的な理由も今のところはない。07年度は通期でも各社最高益を更新する見通し。続く08年度も、鉄鉱石、原料炭の値上がりが期待できるため、高水準の利益が続く可能性が高い。
一方で、いわゆる卸、専門商社の業況は「曇り」。
化学や機械など、国際的な取引先を相手とする専門商社は堅調だが、菱食<7451>など食品卸や日用雑貨といった国内需要依存型の商社は厳しい。縮小する市場、川上インフレに川下デフレなど、厳しい環境が続く。
【山田 雄大記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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