日本の森林が危ない、外資の買収に、所有者の所在不明 

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森林売買が懸念されるのは買収地域が水資源にもつながるからだ。現時点で「外資が買収した土地で、その後に大規模な伐採があったり転売されたりといった大きな変化はみられない」(倶知安町企画振興課)というが、その所有目的などがわからないケースもある。また、北海道以外の地域で「水利権を保有する国内企業を外資系企業が買収した例もある」と指摘する関係者もいる。

そもそも日本の森林売買の把握は不十分だ。4月に施行された改正森林法では従来対象外だった1ヘクタール未満も含めてすべての森林売買の事後届け出がようやく義務づけられた。が、事後届け出であるうえ、罰則も10万円以下の過料と緩く、「抜け穴だらけ」(平野研究員)。農地法によって売買や利用目的が厳しく規制されている農地とは大きく異なる。

そんな中、北海道、埼玉県、群馬県は独自に水源保全地域を指定し、売買する場合、売り先の氏名や利用目的などについて事前届け出を義務づける条例を10月から施行する予定だ。また、東京都水道局は10年から多摩川上流域での民有林について、林業不振等で手放す意向があれば、水道局が買い取りを提案する制度も導入している。

ただ、日本では土地の所有権が強く、万が一、水源地の森林を悪意ある個人や法人に買われた場合、その水源を地域に配慮しない形で使用されるリスクは無視できない。届け出を実際にするかも含めて、条例の実効性には疑問が残るとの声は多い。

16万人が所在不明

問題はこれにとどまらない。国交省は今年4月に初めて森林の所有者不明の実態調査結果を発表。所在の把握が難しい森林所有者が全所有者324万人中約16万人にも上ることが明らかになった。

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