新幹線の「車内改札」が今になって終わる事情 不評の多かった"恒例行事"がいよいよ廃止に
違う列車の指定席に座った乗客と、本来の指定席の持ち主とのいざこざが時々起こるという。それならば、利用客全員に車内改札を実施したほうが手っ取り早い。これが従来のJR東海の主張だ。
だが、インターネットできっぷの予約や変更ができる「エクスプレス予約」の利用客が指定席の3割を占めるまで普及したことで、状況が変わった。エクスプレス予約なら、発車時刻4分前までであれば、列車の変更が可能だ。指定された席以外に座る乗客はグンと減った。
新端末でビジネスマンの"裏技"に対応
指定席の車内改札廃止の背景には、もう1つ、見逃せない要因がある。それは自由席の車内改札を引き続き行うことと密接に関係している。
時間に余裕を持って駅に到着した場合、本来乗る予定だったものより前の列車に飛び乗り、自由席を利用する乗客は少なからずいる。最近よくあるのが、窓側などに装備されているコンセントを目当てにしたケースだ。
利用者の多い東海道新幹線は、席が空いているといっても、コンセントがある窓側は埋まっていることが多い。そのため、通路側の指定席をとりあえず確保しておいて、前の列車や当該列車の自由席の窓側に空きがあれば、そちらに座るという“裏技”を使うビジネスマンもいる。
こうした理由で指定席の乗客が自由席に座っていることを車内改札で確認したら、車掌は携帯端末でその乗客が購入していた指定席の返席を行う。これによって、その指定席が販売可能になり、ほかの乗客が購入できるようになる、というわけだ。
たとえば、東京から新大阪方面へ向かう新幹線では、品川を出てすぐに自由席を改札して後続列車の指定席券を持っている乗客がいたら、返席することで新横浜から新大阪方面に向かう乗客に販売することができる。品川―新横浜間では時間がわずかしかないが、名古屋から新大阪方面に向かう人が購入するのは十分可能だ。
従来は、指定席の返席情報が当該列車の車掌が持つ携帯情報端末に伝えられず、新たに購入した指定席情報と重複表示されていた。だが、携帯情報端末を改修したことで、乗客の利用状況を正確に把握できるようになった。これもJR東海が車内改札の廃止に踏み切った理由の1つといえる。
車内改札の廃止で気掛かりな点もある。これまでJR東海は、車内改札を行う理由について「お客様一人ひとりに声をかけることで、車内サービスの向上にも役立つ」と説明していた。実際、車内改札が煩わしいという意見がある一方で、6月に起きた焼身自殺をきっかけに、車内の安全対策を強化すべきとの声も増えている。
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