仕組み債による証券会社「荒稼ぎ」の手口 金融庁も問題視、調査に乗り出した

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「貯蓄から投資へ」個人マネーを動かすことが叫ばれ、そのためにも適切な証券商品の販売が強く求められるようなっている中で、この稼ぎ方が妥当なのか――。株価下落による損失発生もさることながら、手荒くみえるスプレッドの稼ぎ方に、投資アドバイザーなどからの厳しい視線が向けられている。

金融庁が仕組み債の設計・販売の仕方を調査

金融庁は11月中旬、投信などの販売態勢に関するアンケート調査を証券各社宛てに発出した。そのなかでは、仕組み債について、①収益として計上する実質的な手数料の設定プロセス、②顧客が商品性を適切に理解するための仕組みや工夫、などに回答を求めている。監督当局が仕組み債設計の考え方や販売の仕方に関心を寄せていることが浮き彫りになった内容といっていい。

金融庁も調査に乗り出した

その一方で、証券会社のビジネスモデルは取引から生ずる手数料収入に依存する構造から脱却できていない。

米国の富裕層取引のように、預かり資産残高に応じて報酬を得るビジネスモデルは制度的にも整備されず、さらにいえば、投資アドバイスにフィーを支払うという価値観も投資家層には希薄と言わざるを得ないからだ。

その意味では、投信の回転売買にせよ、仕組み債の早期償還を乱発することによる実質手数料の荒稼ぎにせよ、そうした方向に傾きやすい土壌があることは否定できない。しかし、そうしたビジネスを繰り返す限り、顧客に投資アドバイスを信頼してもらい、その対価を受け取るというビジネスへの転換点も訪れない。「貯蓄から投資へ」の担い手としての自覚の問題といってもいい。

ちなみに、証券業界のなかには、仕組み債の販売を基本的に行わない方針を守り続けているところもある。一部証券会社の仕組み債問題がそうした証券会社まで巻き込んだ業界批判に拡散することがないよう、業界内で自主的に一定のルールづくりをすることが必要かもしれない。 

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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