仕組み債による証券会社「荒稼ぎ」の手口 金融庁も問題視、調査に乗り出した
同様の仕組み債問題は、過去にも幾度となく発生し、大きな社会問題に発展したこともある。1990年代には、農林系金融機関がEB債を数段激しいハイリスク商品に設計した日経平均リンク債を買わされて失敗し、経営危機に陥ったことすらある。当時に比べると、現在は金融機関に限らず、一般事業法人まで投資ルールが厳格化され、そのような極端な事態は発生しにくい。だが、中小企業や個人の富裕層の領域は事情が異なっている。奇しくも、その実情が露呈したのが今回という言い方もできる。
株価が上がって早期償還でも証券会社は稼げる!
過去のケースでは株価の下落による元本毀損が問題視されたが、今回はむしろ、株価が上昇した場合の早期償還を巡って、商品設計を問題視する向きが多い。たとえば、顧客から投資相談を受ける投資アドバイザーはこう説明する。
「早期償還が頻発しているので、商品を調べると、組み入れた株式のなかにエッと驚くような銘柄がある」
たとえば、スリー・ディー・マトリックス株のように、一時期の価格のブレが激しかった銘柄であると言う。「大きく動きやすい銘柄を組み入れて、たやすく早期償還となるようにする発想がにじみ出ている商品」と同氏は指摘している。
証券会社の利益の源泉は販売手数料だが、仕組み債の場合、債券という仕立てであるため、証券会社の仕切り値方式であり、その収益は値ザヤ(スプレッド)となる。したがって、顧客は手数料名目での支払いはないが、売った側は確実にスプレッド収入という形で高い手数料を得たと同様のサヤを抜いているのである。
さらに、一般に、投資家行動を考えると、投資資金が早期償還されると、戻ってきた投資元本で再投資に向かいがちだ。したがって、早期償還が頻繁化すると、そのたびに新たに組み直された商品への投資が誘発され、販売会社には、投信の回転売買による手数料稼ぎのようなスプレッド収入の創出が起きる。
今夏前には、このスプレッドが著しく大きい商品も一部証券会社で設計され販売されていたという。ここに来て、一部でスプレッドを縮小させる動きが出たのはその反省とみることもできる。
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