【産業天気図・工作機械】外需牽引で07年は過去最高の活況満喫。08年も高水準維持か
工作機械業界は依然「快晴」状態だ。来08年度については、「1兆4000億円を超える最高水準の受注が2年も続いただけに、さすがに減速か」(業界中堅首脳)との声も聞かれるが、欧州や新興国など米国以外の海外市場が力強く、“失速”の恐れは乏しい模様。各社、一歩ないし半歩前進が続きそうだ。07年度後半の天気は「快晴」、08年度は「晴れ」と予想する。
業界団体・日本工作機械工業会の調べでは、07年の受注は1~11月累計で前年同期比11.3%増の1兆4592億円。過去最高だった06年1年間の1兆4370億円をすでに軽く抜き去り、通年の着地は1兆6000億円も射程圏だ。国内こそ自動車関連の本格回復が遅れ、一般機械や電気・精密も足踏み基調で内需は1.2%減だが、欧州・アジアを軸に外需が前年より25%近い伸びを見せており、内需の低調を補って余りある貢献を続けている。
「内需伸び悩み/海外牽引」という構図だけに、最近の円高傾向やサブプライム(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)問題で外需が縮小するかどうかが今回の『会社四季報』(08年新春号)取材のポイントとなった。が、中村健一・工業会会長は「実態のビジネスに変化はない」とサブプライムの影響を否定。円高についても、「たとえば北米市場で争っているのは日本メーカー同士」で、為替変動が日本勢に不利には働かないと説明する。要するに、潮目が変わる気配は見当たらないというわけだ。事実、多くの企業がフル操業で受注残を積み上げており、価格面ではユーザーも当惑するほどの強気姿勢。鋼材の資材高などは必ずしも打撃となっていない。
実際、業界大手のオークマ<6103>や森精機製作所<6164>の業績は、会社計画比強含みで見てきた従来の『四季報』予想の線で推移。東芝機械<6104>も重厚長大産業向けの大型機が絶好調で、オークマ・森精機と同様に強気だった『四季報』前号(07年秋号)予想にもう一段上積みした。期初に超慎重な計画を示していた工作機械用NC装置最大手のファナック<6954>も、07年9月中間決算の好調を踏まえ、ついに通期計画を上方修正。『四季報』は今回、その修正計画を上回る着地を予想している。
とはいえ、個別の事情で期初想定に比べ苦戦している企業も散見された。やはり業界大手の牧野フライス製作所<6135>は、国内自動車投資の低迷で得意の金型向けが苦しんだうえ、強みを持つアジアで現地向け機種開発の遅れや人手不足によるサービス停滞等の失策が重なった。今期は営業微増益計画から一転、減益が避けられない見通しだ。また、高精度が身上のツガミ<6101>もHDDや自動車向けなど内需回復の遅れが響き、今期利益予想を大きく下方修正した。同社は欧州の独自開拓に着手したばかりで、内需の鈍さが業績を直撃した格好だ。外需の好伸で内需不振をカバーできた企業と、できなかった企業とで明暗が分かれている。
焦点の08年の行方だが、08年1~3月期の受注見通しについて、工業会が会員向けに12月上旬行ったアンケート結果によると、「増加」が10.2%、「保ち合い」が76.6%。これは9月実施の10~12月期アンケートに比べ、それぞれ3.0ポイント減、3.0ポイント増で、「増加」と「保ち合い」合わせて9割近くの会員企業が「現状の高水準が続く」と見ている状況に変化はなかった。
国内自動車関連の回復が遅れ、一般機械関連等も低調という状況下にもかかわらず、上記アンケートの通り弱気の台頭は見られない。したがって、これらの業種で設備投資が再び活発化すれば、08年は一層力強さを増すという期待できそうだ。しかし、円高やサブプライム問題がもたらす“間接的な”マイナス影響の懸念は拭いきれず、今の時点で07年のような受注2ケタ増が来年も続くと見るのは、楽観的すぎるとの批判は免れまい。漸増ないし高原状態継続がメインシナリオと見ておくのが、現状、手堅い線と思われる。
【内田 史信記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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