《プロに聞く!人事労務Q&A》リストラ社員の引っ越し費用を負担しなければなりませんか?
業績悪化のため、リストラの一環として地方支社の社員を解雇しました。この社員は、東京出身のため東京へ戻るとのことです。先日、この社員が「会社都合の解雇なので引っ越し代を会社に負担して欲しい」と言ってきました。
弊社には、退職した社員の引っ越し代を支払う規定はありません。解雇した社員に引っ越し代を支払うべきでしょうか。
回答者:石澤経営労務管理事務所 石澤清貴
結論から申し上げて引っ越し代の負担義務は発生しません。お尋ねの内容からは、この社員が、地方支社がある現地で採用されたのか、又は転勤で地方支社にいたのかは不明ですが、いずれにしても、リストラ(整理解雇)が法的要件を満たしたものとして行われたものであり、かつ、整理解雇の条件として、帰郷する場合の引っ越し費用を負担する条件が付されていないのであれば、負担の必要はありません。
労働基準法第15条第3項では「就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない」と定めています。しかしながら、この前提条件は、労働契約締結時に示された労働条件が就労後における事実と異なる場合において、その労働契約を即時解約することを認めて帰郷旅費の負担義務を使用者に課しているもので、今回の場合には適用がありません。
なお、転勤者にあっては、会社の都合で転勤させ、かつ、整理解雇となったことを踏まえれば、転勤者に限り引っ越し費用を負担することは、整理解雇をめぐる争いを回避するための条件として、適当な措置とも言えます。