バフェットの孫が設立した投資会社の「目的」 社会貢献と利益の二兎を追うことはできるか

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「過去の投資家は、投資が自分たちの価値観の表れだという風には考えなかった」とニールソンは言う。「人々の意識は高まっている。つまり社会変革と利益の両方を手にできる歴史的チャンスが到来したわけだ」

祖父からのアドバイスや出資はなし

さてi(x)がスタートを切る一方で、祖父ウォーレン・バフェットが経営するバークシャー・ハサウェイは傘下企業の事業をめぐって批判を浴びている。

バークシャーはコカコーラの大株主であり、老バフェットはジャンクフード好きを公言している。一方、アメリカの食は健康志向になりつつある。今月、ヘッジファンドマネジャーのウィリアム・アックマンはコカコーラは「社会に甚大な被害をもたらしている」と主張、バークシャーのチャーリー・マンガー副会長と非難の応酬となった。

またバークシャー傘下で米住宅建設最大手のクレイトン・ホームズは、貧しい人々を食い物にしていると非難された。同じくBNSF鉄道に対しては、汚染物質をまき散らしながら走り、石炭などの化石燃料や危険物質を運んでいると批判の声が聞かれる。

バフェットはi(x)の立ち上げに際し、祖父にアドバイスや出資を求めたことは一度もないと言う。父のハワード(バフェット一族の慈善財団の運営にあたっている)も祖父もi(x)には出資していない。

「私は2人の前では話題に非常に気を遣っている。また、公の場で事業のことをどう表現するかについてはさらに気を遣っている」とバフェットは言う。

i(x)が投資しようとしているのはごく新しい技術であり、長期的な視点は非常に重要だ。

「ライフサイクルに限界があり、投資家は利益(のみ)を求めるというファンド構造は、インパクト投資 の正しいモデルとは言えない」とニールソンは言う。「世界が抱える重大な問題は、持続可能な投資によって対処されるべきだ」

i(x)においてバフェットは、社会への貢献度を測るシステムを設計するという役割も担っている。

これまで政府や学問の世界で主に生きてきたバフェットにとって、持ち株会社の設立は必ずしも当たり前の選択ではなかったが、バフェット一族の出身であることを最大限に利用した決断ではあった。

「ハワード(・バフェット)は最も社会を動かせる立ち位置はどこか探している」と言うのは、コロンビア大学のウィリアム・アイミック教授だ。アイミック教授はバフェットの恩師で、現在は2人で組んで授業を行っている。「これまで力を入れてきた分野(の研究)を現実化しているのだ」

 バフェットにとっては、i(x)を「良心のある小型のバークシャー・ハサウェイ」に育て上げることが望みだ。

「私たちが考えているのは、長期的な視野に立ち、過ちを避けるよりも行動を重視し、実際にこの世をよくしようと手を動かす投資だ」とバフェットは言う。「資本主義が新たなレベルへと進む可能性に賭けるということだ」

(執筆:David Gelles記者、翻訳:村井裕美)

(c) 2015 New York Times News Service)

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