日本の天才数学者、谷山豊が得た奇跡の着想 「数学の大統一」に日本人が大貢献していた
こうして一挙にスポットライトを浴びた「志村・谷山・ヴェイユ予想」だったが、実はこの予想は、ラングランズ・プログラムにとって重要な意味をもっていた。それは、数論と調和解析とをつなぐ驚くべき予想だったのだ。
フレンケルは、この連続講義の最初にラングランス・プログラムとは何かを説明する際に、崩したジグゾーパズルの山をいくつかつくり、「数学にはさまざまな領域がある。それらはいわば海に隔てられた大陸のようなものだが、しかしそこには不思議なつながりがある。そのつながりを探っていくこと」と説明した。
「数論」と「調和解析」
数論とは、数の性質とふるまいを探る世界、調和解析とは、たとえば三角関数や音の倍数など周期を起点にして考える数学だ。
一見似ても似つかない二つの分野が、どう関係しているのか。
フレンケルは鮮やかにそのことを講義する。数論の分野では手に負えなかった難問が、調和解析の世界に持ち込んだとたん、鮮やかに解けてしまう。
それが、「志村・谷山・ヴェイユ予想」だと。
何のパターンもなさそうに見え、このままでは、まるで泥沼にはまったように、どこまでも先の見えない計算を続けることになりそうな数論の問題が、特殊な対称性を持つ調和解析の関数を考えることで、すっきりと解決しまう。
そして、この予想を証明することが、数学者たちの挑戦を300年以上にもわたって退けてきた、「フェルマーの最終定理」を証明することになったのだと。
フレンケルの講義を聞きながら、わたしは背中がゾクッとした。これは魔法じゃないか。たった一行の式が、まるで打ち出の小槌か、魔法の杖のように思われた。その式をちょっと振ってやれば(カッコをはずせば)、泥沼のような数論の問題への答えが、ポロポロと出てくるのだから。
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