日経平均2万円、4度目のトライ失敗 「黒田コール」の期待低下
10月30日の決定会合で、日銀は物価見通しを下方修正しながら、政策は現状維持を決めた。これにより、市場の追加緩和への期待感は大きく低下。ソシエテ・ジェネラル証券東京支店チーフエコノミストの会田卓司氏は「黒田コールへの期待感は消え、黒田プットが残った」と話す。
市場では景気や株価が落ち込めば、日銀が追加緩和してくれるという期待感を、黒田東彦総裁の名前をとって「黒田プット」と呼ぶ。相場下落時にオプション取引で売る権利である「プット」を持つのと同じようなヘッジ効果があるという意味だ。
一方、「黒田コール」とは、景気や株価が悪くない状態でも物価見通しが下がれば、日銀が追加緩和を実施することへの期待感だという。オプション取引における買う権利である「コール」を購入するのと同じように、追加緩和があれば、相場上昇時のリターンが大きくなるとの期待だ。
昨年10月31日、日銀は追加緩和を決定した。その前日の日経平均は1万5658円、ドル/円は109.22円。上昇局面だったわけではないが、ともにレンジ相場内での推移で、少なくとも急落が心配されている場面ではなかった。それゆえ、サプライズとなり、市場も大きく反応した。
しかし、日銀は、先の会合では物価見通しを下方修正しても追加緩和を行わなかった。「昨年は景気や株価が堅調なのに追加緩和を行い、円安や株高が大きく進んだ。今回、景気や株価が悪くなるまでは追加緩和しないということがはっきりした。ドル/円や日本株は、下がれば買えるが上値は買えないというムードが広がっている」と会田氏は指摘する。
消去法の日本株買い
円安進行が伴わなければ、日本企業の増益ペースも鈍る。「この先、ドル/円も日本株も、下がらないが大して上がりもしない」というレンジ相場予想は徐々に増えている。
足下の日本株の上昇は海外投資家が主導してきたが、アベノミクスへの積極的な評価ではないとの指摘も多い。「海外勢は消去法的に日本株を買っている。米株は十分持っているし、欧州は地政学リスクが高い。日本とインドぐらいしかないという買いにすぎない」(海外駐在の邦銀エコノミスト)という。
日経平均やTOPIX<.TOPX>が重い一方、マザーズ指数<.MTHR>が好調であることも、先高観の弱さを示している。27日は0.51%安と反落したが、前日は2.63%の大幅高だった。「主力株の上値の重さを感じて、個人投資家が中小型株にシフトしている」(外資系証券トレーダー)という。
一方、12月15─16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向け「米利上げをきっかけに円安が進み、日本株も上昇を加速させる」(メリルリンチ日本証券・チーフ日本株ストラテジストの阿部健児氏)との強気な見方もある。
マクロイベントを機に、リスクオン相場が加速するのか、それとも材料出尽くしか──日本株も分岐点を迎えつつある。
(伊賀大記 編集:石田仁志)
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