【産業天気図・造船/重機】船舶の部門収益が急改善、産業機械も受注好調。円高転換でも今年度は「日本晴れ」

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受注面でも収益面でも、重工業の勢いにカゲリは見られない。07年度後半は間違いなく、日本晴れの「快晴」が続く。08年度前半も世界経済に急変がない限り、豊富な受注残に支えられて、最低限「晴れ」の天気模様は確保できる。
 造船各社のドックは2010年まで完璧に埋まっている。現在進められている新造船の商談は、2011年から2012年に建造する分。三井造船<7003>の06年度の船舶の受注高は2353億円だったが、07年度第1四半期だけで1192億円に達した。「バラ積み貨物船など新造船の受注は計画を上回る。受注船価も堅調」(三井造船)。過去に受注した不採算船は今年度にはほぼ一掃され、部門収益は劇的に改善する。
 船舶以外の受注も堅調だ。産業機械工業会によれば、年初から産業機械の月間受注が前年を下回ったのは、6月1回だけ(5月に54%増となった反動)。ボイラ・原動機や化学機械などを中心に、直近7月の受注は前年比32%増となった。当然、産業機械を幅広く手掛ける「総合重工」は絶好調だ。
 総合重工3社の一角、川崎重工<7012>は第1四半期の営業利益は前年の2倍に伸ばした。さすがに米国向けの二輪車や建機はシュリンク気味だが、産業ロボットが高水準を維持し、航空エンジンの部品も伸びている。9月中間期の業績予想を70億円の営業赤字と公表しているIHI<7013>も、第1四半期だけで132億円の営業利益を稼ぎ出した。
 一般に、海外売り上げの比重が高い重工業は為替変動に打たれやすいというイメージが強いが、実態は必ずしもそうではない。そもそも、受注から納入まで数年かかる案件が多いため、前受金や工事の進行に合わせた支払いなどの形で、手前で入金されるポーションが大きい。三菱重工<7011>を例にとると、年間の外貨建ての取り扱い額は50億~60億ドルあるが、為替変動に晒されているのは10億ドルだけ。それについても予約済みだ。川崎重工も「今年度の入金分は為替予約が終わっている。円がどうなろうと影響ない」と言い切っている。
 第1四半期の業績発表時点で一足先に三井造船が増額修正に踏み切ったが、川重、IHIが後に続くのは確実だ。
 来年度に入れば、船舶の収益改善がさらに鮮明になり、記録的な受注残が高操業を保証してくれている。米国市場の悪化を埋め合わせ、重工業の”快進撃”が続くことになる。
【梅沢 正邦記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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