アジア繁栄のために女性に“力”を与えよ--ヴィシャカ・デサイ アジアソサエティ理事長、リー・クアンユー公共政策大学院副学長 アストリッド・トゥミネス
しかし、家族や王家絡みでリーダーになることは男女平等の進展の兆候ではない。そして、アファーマティブアクション(積極的差別是正措置)は女性の政治進出をかなり促したが、まだ女性全般に真の恩恵をもたらしていない。
さらに、人間開発(各国の人々の生活の質や発展の度合い)と女性のリーダーシップは正比例していない。日本や韓国などの、人間開発ランキングで最高水準のアジア諸国の一部は、管理職、賃金の平等、報酬、政治的権限などで最低水準のグループに入っている。シンガポールと香港も、高水準の人間開発にもかかわらず、リーダーシップでかなりの男女格差を示している。
まずは農業と起業で女性を支援せよ
アジアでは女性の多く──日本で70%、中国で53%、シンガポールで46%──が中間管理職から上級管理職に昇進できていない。より体系的な支援によって、女性が母や介護者としての役割をあきらめることなく、責任あるキャリアを追求できるように後押ししなければならない。メンター制度、育児休暇、高齢者介護の支援などに加え、より男女平等な退職と年金の制度も必要だ。
結局、凝り固まった社会的・文化的な規範がなお、アジア女性のリーダーシップに対する障害になっている。女性がリーダー的な役割に就くことを促すために、人々を教育して、女性に対する評価と認識を変え、家庭と公的な場で女性により平等な発言権を与える幅広い活動が欠かせない。
ただし、教育は解決策の一部にすぎない。積極的差別是正措置は、女性がリーダーの地位に就くことを促すことができるが、深くしみ付いた社会的規範に影響が及ぶには時間がかかる。ただ、地方政治のレベルで女性リーダーが増えれば、偏見を減らし、若い女性の志と教育的な成果を高められる。これは、インドで実際に起きていることだ。