日本人は「節約命」の考えをそろそろ捨てよう 藤野英人×ちきりん、デフレの稼ぎ方を語る

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藤野:だからこそ、「マーケット感覚」や「投資の思考法」が必要なんです。今ある500兆円のGDPが縮小方向に向かう中で、その構成要素は確実に変わっていく。ますますマーケット・メカニズムがはたらく時代に入っています。つまり過去の成功パターンに縛られていると、変化に置いていかれる時代になったということです。

「見栄」におカネを払えるか?

藤野:そもそも、非合理なものにおカネを払わないというのは、別の言い方をすると「見栄におカネを払わない」ということですね。歴史的に見ても、「文化」とは見栄ですから。歌舞伎なんてまさに見栄を切る世界ですよね。デフレマインドの人たちは、見栄を張らない生き方をしているわけですが。

ちきりん:私が「マーケット感覚を鍛えろ」って言っているのも、まさにそこです。合理化やイノベーションによってGDPが減る。じゃあどうすればいいかといえば、「見栄」など、まだ顕在化していないけど人が価値だと感じるものを見える化して、プライシングしていくことだと思うんです。

ホテルだって、かつては宿泊料1万円のホテルが「高級」とされていました。バブルの頃でさえ、帝国ホテルは2万円ぐらいだったんです。でも今だと2万円の部屋ってリーズナブルなレベルで、高級ホテルの場合、一泊4万~5万円は超えていますよね。これ、ホテル業界が「見栄」の価値をきちっと上げてきたから実現したんだと思うんです。

ところが、この付加価値を消費者に納得させたのは、アマンやリッツカールトンをはじめとした海外の企業なんです。日本にも御三家など一流ホテルはあったのに、彼らは5万円の部屋の価値を消費者に説得できなかった。外資がそれに成功してから、後から乗り出しているんです。これってダイソンの掃除機とかも同じなんですけど、日本人は機能や素材、数量など以外の「非伝統的な価値」を消費者にアピールして評価してもらえばいいという「マーケット感覚」が全然ない。

藤野:ラグジュアリーのホテル業として、どういうあるべきかが欠落しているのかもしれないですね。

ちきりん:そうかもしれません。ラグジュアリーといえば、北陸新幹線のグランクラスは乗られました?

藤野:乗りました。

ちきりん:どうですか?

藤野:グランクラス、僕、好きなんです。ほとんど1両、全部自分のものにできるから。

ちきりん:そんなに空いてました!?

藤野:乗ったら誰もいなかったんで、ずーっとフルートの練習をしてました。

ちきりん:いえいえ、ちょっと待ってください。それって1人の乗客としてはいいけど、ビジネスとしては最悪じゃないですか。

藤野:だからビジネスは成り立ってないかもしれない。けれど、僕はハッピーでした。

社会派ブロガーのちきりんさん。素顔はヒミツです!

ちきりん:私が乗ったときは平日でしたが、乗車率は悪くなかったんです。

確かにシートはすばらしかった。匠の技術なのかもしれない。でも、どのターゲットを狙っているのかよくわからないんですよね。シートの間に仕切りがあって、隣に座る同行者の顔も見えないんですよ。これじゃあ女子旅にもラブラブカップルにも不向きでしょ。

じゃあビジネスパーソンを取り込みたいのかって言うと、テーブルは小さいしガタガタしちゃって、パソコンも安定しない。日本が作るラグジュアリーって、誰にどういう価値を提供するのかという視点が全然ないなって思いました。

藤野:僕やちきりんさんって、電車乗るときでも、「価格と価値が合っているかな」といつも考えてますよね。それこそ、「マーケット感覚」だと思うんですよね。

ちきりん:そうですね。でも、そういうことしない人いっぱいいますよね。

※第2回に続く

(撮影 : 今 祥雄)

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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