活況の「門前薬局」がジェネリックに走る理由 日本調剤は2016年度の逆風をこう乗り越える

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こうした好調を受けて、上期決算と同時に通期予想も上方修正した。今期は売上高2204億円(前期比21.2%増)、営業利益107億円(同61.6%増)と大幅増益を見込む。

ただし、残念ながら来期はこの勢いが続きそうにない。2016年度が2年に一度の診療報酬の改定年度に当たるためだ。増え続ける医療費を抑制するために、政府の「骨太の方針」に沿った診療報酬の引き下げは不可避な情勢。調剤の受け取る医療費の4分の3を占める薬剤料は、このところ、下落傾向が続いている。

残りの4分の1を占める技術料(診療報酬本体)については、過去4回連続で引き上げられたが、今回はこちらも引き下げ方向で見直しが検討されている。日本医師会の反対などもあり、どこまで下がるか不透明な部分もあるものの、業界各社の来年度予想はM&Aを含む出店増や調剤以外の事業の拡大を加味しても、利益は伸び悩むとみられる。

特に10月に公表された財務省試案では、調剤基本料の見直しとして、1つの病院への集中率が高く、処方箋受付回数の多い薬局の基本料を引き下げるようになっており、大型の門前薬局ほど不利になっている。日本調剤でも、2016年度は後発薬製造、薬剤師派遣こそ続伸が予想されるが、調剤薬局部門には薬価下げが直撃するため、利益の伸びは鈍るだろう。

ジェネリック大手と並ぶ製造力に

コンビニよりも店舗数の多い調剤薬局が、今後も現在の陣容で生き残っていくことは難しいのではないか。そうした危機意識は上場大手ほど強い。そこで、ローソンとの複合店舗を拡大するクオールをはじめとして、各社各様に収益の多角化を図っている。

日本調剤はジェネリック製造で製薬大手に匹敵する生産能力を得るべく、172億円をかけ、つくば工場の隣に第2工場を建設する。着工は今年12月、延べ床面積は3万平方メートルで、2018年3月に竣工予定だ。ジェネリック医薬品市場の動向を見ながら、3段階で稼働する予定で、ピーク時の生産能力は年間100億錠、グループ全体では年間156億錠と現在の3倍に拡大する見込みだ。

ジェネリック製造と薬剤師派遣・紹介を合わせた事業利益が「おそらく50%を超えるのも早晩だろう」(三津原博社長)という。調剤薬局が儲かるうちに多角化分野をどこまで育成できるか。調剤大手各社の生き残り競争が熾烈さを増してきた。

山川 清弘 「会社四季報オンライン」編集部 編集委員

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やまかわ・きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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