なぜ吹奏楽は「大きなビジネス」に発展しないのか?地域移行の最大ネック「活動費」の問題解決も阻む《独特の文化》の弊害

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エンタメとして広く認知されているポップス(J-PopやK-Popなど)のようなトレンドへの順応性の高さは、吹奏楽独自の作品には見られない。一部の有名ゲーム音楽の吹奏楽演奏会は常に大入り満員であるようだが、それもまた編曲作品であって、純粋な吹奏楽作品ではない。

「これぞ吹奏楽」と誇れるようなエンタメ作品がなく、ポップスとして独自のジャンルを確立できなかったこともまた、吹奏楽がビジネスとして大きく発展できなかった理由の1つであろう。

「聴いて楽しい」よりも「演奏して楽しい」のが吹奏楽の本質、という人もいる。多くの吹奏楽人の肌感覚にあるこの空気感もまた、「吹奏楽人以外の愛好家」を作れない原因であろうと考えられる。吹奏楽をやっている人でないとそのよさがわからないのでは、将来性はない

また、今を生きる作曲家たちとの創造活動を展開しているという観点で言えば、吹奏楽も「現代アート」としての要件は満たしているはずである。

しかし、同じ現代アートでも、テクノロジーを駆使したメディアアートは、ここ10年前後で大きな進化を遂げ、その存在を確立したと言える。大きな資本も投入されている。

アニメーションも、制作・創造が手作業であるという点で吹奏楽とそのプロセスが類似しているが、その存在感と経済効果は吹奏楽とは比べ物にならないほど大きい。

吹奏楽は「急速な衰退の可能性」も十分にある

「何かを生み出す、作り上げる」というプロセスで共通点が多い他分野と比較してみるにつけ、吹奏楽がいかに自分たちの内側でのみ発展してきてしまったのかがよくわかる

少子化で吹奏楽文化が縮小する中、その本質が「是が非でも残さなければいけないもの」であるかどうかを問い直さなければ、何のアート性も生み出すことなく単なる閉鎖的なエンタメ文化で終わってしまい、近い将来、急速に衰退する可能性が十分にある。

地域展開は単なる部活動や若い世代の文化持続だけではなく、少子化時代における新たな社会文化の価値創造に寄与する重要要素であるからこそ、国が直接乗り出してきたのであろうと考えられる。であれば筆者を含む当事者は、活動のあり方を見直し、ビジネス的発展も見据えて新たな価値観を生み出すために行動する必要があるのではないだろうか。

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
渡郶 謙一 北海道教育大学音楽文化専攻合奏研究室 21世紀現代吹奏楽レパートリープロデューサー

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わたなべ けんいち / Kenichi Watanabe

東京藝術大学卒業後、メリーランド大学大学院にて音楽修士号取得。イーストマン音楽院博士課程進学。デンマーク政府奨学生として王立音楽アカデミーに留学。レオナルド・ファルコーニ・ユーフォニアム・コンクール第1位受賞。ヤマハ吹奏楽団浜松名誉指揮者、北海道教育大学音楽文化専攻准教授。北海道教育大学スーパーウィンズ音楽監督。

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