なぜ吹奏楽は「大きなビジネス」に発展しないのか?地域移行の最大ネック「活動費」の問題解決も阻む《独特の文化》の弊害
以下に、主な収入と支出をまとめてみた。高価な楽器や楽譜の購入だけでなく、その維持費も必要で、専門家に指導を依頼する際の講師料や施設利用料など、ほかの文化部と比べて費用が多くかかる。そして、その費用は補助金や寄付などの外部の支援も受けながら賄ってきた。
・部費徴収
・学校や自治体からの補助金
・保護者会やOB会からの寄付
・演奏会やイベントの収益
・楽器や備品の購入およびメンテナンスの費用
・活動費(遠征・大会参加費など)
・運営費(施設利用料・消耗品など)
・指導講師料(学外者)
・楽譜の購入や使用料など
会計を管理していたのは、顧問教員だ。部費や学校予算、自治体や保護者からの援助はすべて学校に集約され、顧問教員が収支を一括管理してきた。部活動は法的には教員の職務ではないものの、事実上は顧問教員の「通常業務」として認識されていたため、学校内で完結する会計処理が可能であったのだ。
学校内で会計も完結できていたという能率性が結果的に閉鎖性を生み出し、現在の地域展開を難しくしていると考えられる。実際、国内総人口の約1割とも言われる膨大な吹奏楽従事者を抱え、特徴的な文化としての価値を持ち合わせているにもかかわらず、吹奏楽はいまだに外部との連携やビジネス的発展という形で花開くことができていない。
このことが、実は日本の吹奏楽の最も大きな問題だと筆者は考えている。先述のように多額の費用がかかる活動の特性上、地域展開に当たってはこれまでとは異なる財源を集める努力をしなければ継続的発展は極めて困難だ。有効な財源確保の方法は、現時点ではないと言わざるをえず、それぞれの団体で大人が知恵を絞らなければならないのである。
スポーツのようにプロへの道が開かれていない
このままでは、衰退か淘汰の波が待っている。しかし、吹奏楽が地域展開とともにビジネス的な視点を取り入れ、新たな価値創造や社会との連携を進めることができれば、経済的課題も解消できる可能性がある。
実際、公立高校サッカー部が企業とのスポンサー契約で活動費を確保した事例や、クラウドファンディングで遠征費を集めた私立学校吹奏楽部の事例などはある。公立学校吹奏楽部も従来の閉鎖的な枠組みを超えていけば、持続可能な文化として発展する可能性が広がるのではないだろうか。
例えば、地域イベントや教育プログラム、音楽関連産業との協働、デジタル技術やメディアとの融合など、ビジネス展開によって吹奏楽の魅力や社会的意義を多様な形で発信できる。これにより、地域コミュニティの活性化や新たな雇用・経済効果も期待でき、少子化時代においても吹奏楽が社会に貢献する道が開かれるだろう。
閉鎖的であるがゆえに、問題が生じているのは活動費の側面だけではない。他分野との比較を試みると、いかに吹奏楽が孤立して発展してきたかが見えてくる。


















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