なぜ吹奏楽は「大きなビジネス」に発展しないのか?地域移行の最大ネック「活動費」の問題解決も阻む《独特の文化》の弊害

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まず、スポーツ分野は、高校までの部活動からプロに直結する競技が多い。野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール、相撲、などがその代表例であろう。

例えば、野球はドラフト制度によって高校野球部からプロ球団へ毎年選手が供給されている。プロスポーツは、若い世代の育成システムを地域に根差した形で進化させ続け、ビジネスにつなげる道筋も確立している。

一方、吹奏楽はどうだろうか。部活動から直接プロフェッショナル活動に進むことは、ほぼ皆無である。

吹奏楽では、コンクールが隆盛を極めているが、コンクールでのスタープレイヤーがそのまま卒業後にプロ楽団に入った例を耳にしたことはない。プロとして通用するほどのプレイヤーを育てるスキームが吹奏楽部では構築されていないということである。

スポーツに比べて元々のビジネスとしての規模が小さいということはもちろんあるが、吹奏楽は多くの従事者を有しているにもかかわらず、社会とつながる自立した育成システムを構築しようとする努力を怠ってきたのではないだろうか。

実際、専門教育との間には大きな壁がある。音楽のプロになりたいならば音楽大学に行くのが一般的であるが、ここもまた、吹奏楽部での育成・教育システムとは直結していない。

通常、音楽大学を受験するためには、ソルフェージュと呼ばれる音感教育をはじめ、主専攻の演奏技術に加えてピアノの習得も必要だ。こうした音楽基礎能力はプロとして演奏をするうえでマストのスキルだが、この訓練が充実している吹奏楽部もまたほぼ皆無であろうと思われる。

中高の吹奏楽部に所属する管打楽器奏者が多いにもかかわらず、プロスポーツのような早熟なプレイヤーが世に出てくることは極めて稀であるのは、こうした基礎力育成の課題が関係していると思わざるをえない。若いスターが出てきたとしても、吹奏楽部とは無関係に個人で研鑽を積んだ生徒だったり、音楽高校の生徒だったりする。

ここにも、社会につながる道が開かない吹奏楽部の閉鎖性が存在している。

吸収した「音楽ジャンル」を超えていない

ほかの音楽分野と比較しても、吹奏楽は中途半端だ。これまで、吹奏楽はあらゆる音楽ジャンルを吸収して発展してきた。純粋なクラシック音楽はもちろんのこと、ジャズ、ロック、ヒップホップ、歌謡曲、ファンク、ソウルなど、多くの音楽を成長の糧としてきた。

その多様性が演奏者の興味・関心を惹きつけ、多くの吹奏楽人口を持つに至った大きな要因の1つになったとも十分考えられる。今では、マーチングやドリルの発展系としての「ダンプレ(Dance & Play)」も流行の兆しがあり、多様性は増すばかりである。しかし、吸収した大元の音楽ジャンルを超えるものになっているだろうか。現時点ではアレンジ(編曲)のレベルを超えていない

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