台湾侵攻、習近平を待ち受ける「泥沼」の予兆。難攻不落の地形と、戦死を許さない"一人っ子兵士"の弱点
このため多数の犠牲が出れば、家計の大黒柱を失った家庭が急増します。国内で深刻な社会不安をもたらし、戦争継続に反対する世論や反政権運動が高まることも想定されます。
共産党内でも引退した元老らから習近平国家主席の責任を問う声があがるなど、退陣圧力が高まるリスクもあります。
中国とロシアが秘密主義な理由
あまりにも政治的なリスクが大きいので、慎重さで知られる習氏が台湾侵攻に踏み切る可能性は低いとの見方も少なくありません。ただ、こうした専門家の分析は、国家の指導者がおおむね外部者の視点からも理性的な判断をすることを前提にしています。
実際には専制主義の国家のリーダーは、不透明な権力の奥の院の事情によって外部者にとって理にかなわない決断をすることが少なくありません。
その代表例が、2022年から続くロシアのウクライナ侵略です。このときも多くの専門家や識者、政府関係者は開戦直前になるまでロシアの侵攻の可能性に否定的でした。
プーチン氏は前年には侵攻を決断して準備していたとみられていますが、22年2月に開始した理由はまだ明らかになっていません。モスクワのクレムリン(大統領府)や北京の権力中枢がある中南海の意思決定に関する情報公開は極めて限られており、真相がわかるまでには数十年かかるのが常です。
日本や欧米などの民主国家と異なり、専制国家では政権のエリートが国家の重要な機密を独占しています。秘密主義は他者を不確実性や恐怖の中に置き続け、従わせるための統治のツールとみなされているからです。
習氏は1月、軍制服組トップの張又俠・中央軍事委員会副主席らの事実上の粛清を断行し、世界に衝撃を広げました。張氏のクーデター未遂説など多くの臆測があふれましたが、こうした権力闘争の全容が明らかになるのもかなり先のことになりそうです。
中国やロシアが生み出す最大の地政学リスクは、こうした政治体制に根ざした不透明性にあるといえます。秘密主義による恐怖は国内の統治には有効でも、諸外国には不安の源になります。
透明性が高い民主国家が、自らのカードをみせない権威主義国家の秘密主義に不信感を強めるのも当然です。長年、中ロとの外交交渉に携わった日本外務省の元幹部も「長期的な信頼を軽視して短期の工作で裏をかこうとする相手との協議は不快なことが多かった」と振り返ります。
各国がお互いへの不信感を高めれば、その分だけ軍拡競争も加速し、対立の火種を増やすことになります。民主国家と権威主義国家の透明性の差がもたらす安全保障環境への悪影響は無視できません。
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