ガザ地区で最後まで取り残されたイスラエル人人質を奪還したユダヤ人のメンタリティー
ラン氏は警官の制服を着用した状態で発見された。ラン氏奪還のための作戦は「レブ・アミッツ」(勇敢な心)と呼ばれた。最後まで戦い抜いたラン氏への敬意が込められた作戦名である。
本作戦に参加した司令官エリサフ・ヴェルマン中佐(予備役)は、ラン氏の遺体発見に至るまでの過酷な作戦内容について語っている。
重機が使えない、あるいは極めて慎重を期すべき状況下で、「一晩中、自分たちの手で土を掘り返した」という。「ラン氏を見つけ出すまで、250人の遺体1人ひとりを丁寧に確認していくという、気の遠くなるような作業が続いた」。
疲弊していく隊員に対しては、「われわれがここにいる理由は、ランを家に連れ戻すためだ。どれだけ時間がかかっても、どれだけ困難であっても、彼を見つけるまでわれわれは帰らない」と鼓舞し続けた。
「囚われた人々の贖い」
ここまでの執念はどこから来るのか。その背景には、数々の困難な歴史をくぐり抜けてきた中で育まれたユダヤ人ならではのメンタリティがある。ナチスによるホロコーストをはじめ、死んで弔われることもなく、墓さえない無数のユダヤ人がいる。
さらに、ユダヤ教の教えの中に「ピドゥヨン・シュブイーム」(囚われた人々の贖〈あがな〉い)というものがある。他民族に囚われた同胞を取り戻すためには、どれだけ大きな代償を払っても最大限の努力をするべきとする戒律である。国民同士が政治的に対立する中でも、「たとえ遺体であっても最後の人質が帰ってくるまで決して諦めない」という国民の固い意志は、この2年半で揺らいだことはない。
ヴェルマン中佐は、ラン氏を特定した時のことについて次のように語っている。
「ランを発見したときのことです。彼の遺体の検査が進むにつれ、女性医師の目が赤くなっていきました。彼女の顔を見ていると、突然一筋の涙がこぼれました。彼女は微笑んでいました。その瞬間、われわれはランを発見したと悟りました」
さらにヴェルマン中佐は、その日に起きた不思議な出来事を語った。


















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