「値引きすれば顧客は満足する」は幻想だった…同じ費用で成果を2倍にした"割引の見せ方"
ケイティと私は、エドモンズ・ドットコムからこのインセンティブの効果を高めるための支援を求められた。私たちはまず、現状の割引が期待通りに機能していない理由が、レッドフィンのケースと似ていると分析した。つまり、たいていの人にとって450ドルは大金だが、2万ドルの車を購入する際には、そのインパクトが弱まってしまうのだ。
比較の対象を変えるだけで満足度は上がる
私たちが解決しようとした問題は、いかにして割引に対する購入者の認識を変え、追加費用をかけずにインセンティブの効果を高めるかだった。私たちは、別の形式のインセンティブを用いることを試してみた。それは、現金で割引きをする代わりに、購入者に同額のプリペイド式ガソリンカードをプレゼントするというものだ。
450ドルという金額は車の購入価格に比べると大きく感じられないが、ガソリン代としてであれば大きく感じられる。その心理は単純だ。エドモンズ・ドットコムで車を買ったことで、450ドルもガソリン代を節約できる。ガソリンタンクを満タンにするたびに、購入者は自分が賢い方法で車を買ったことを思い出し、嬉しい気分になれる。単に車の価格を割り引くよりも、得をしたと"感じやすい"のだ。この現象は、「メンタルアカウンティング」〔訳注:「心の会計」。心の中で、用途に応じてお金の「色分け」をすること〕と呼ばれている。
リチャード・セイラーが2017年にノーベル賞を受賞した理由の1つは、このメンタルアカウンティングの概念を提唱したことにある。彼はメンタルアカウンティングを、個人や家庭が家計の整理や評価、記録のために用いる認知操作だと定義している。人間の脳にはいくつかのメンタルアカウントがあり、別の予算が組まれていることが多い。
たとえば住居費と食費は別個のメンタルアカウントであり、それぞれ予算の規模が違う。毎月の外食費の予算と、住居費の予算を別々に設けていて、どちらも予算がオーバーしないように気を付けている人は多いはずだ。食費の中でも、何にお金を使うかによって感じ方は変わってくる。レストランに食事に行くとき、割高な駐車場に25ドルの料金を払うのが嫌で、30分もかけて安い駐車場を探すことがあるのに、デザートには躊躇せずにそれと同等の金額を払ったりする。外食の総支出には食事代以外に駐車場代やデザート代なども含まれているのに、駐車場代に割高なお金を払うのがもったいなくて、それを避けるために手間暇をかける。

















