盛り上がる《名作のリバイバル上映》が、映画界にとって「両刃の剣」なワケ "三方よしコンテンツ"だが、負の側面もある
実際、前述の『エヴァ』6作品リバイバル上映は、リアルタイムのエヴァ世代だけでなく、いまの若い世代のファンが映画館に足を運ぶヒットになっている。それは、時代を超えて新たな世代へと庵野秀明ファンを広げながら、タイトルを未来へとつなげていくことになり、作品にとって大きな意義がある。
同時に、製作側にとっては、ビジネス効率的なメリットもある。とくにリバイバル上映は、新作をゼロから作るより予算も時間もかからないことから、企業経営におけるビジネス的な観点では、コストパフォーマンスの高い優良なコンテンツになる側面がある。
加えて、興行ビジネスにおいて、リバイバルが劇場側にとってヒットが確約された“おいしいコンテンツ”であることも大きい。
コロナ禍以降、映画興行はそれぞれの作品のヒット規模が縮小している。メガヒット作品が続いた昨年こそ大盛況を呈していたが、その内側を見れば、ほんの一部の100億円を超える大ヒット作とそれ以外の大多数の作品に二極化しているのが実情だ。
大ヒットするのは漫画原作や人気シリーズの続編ばかり。邦画実写はもとより、アニメでも独立系の小規模な作品など、とくにオリジナルの新作は苦戦が続き、なかなかヒットが生まれない。
コロナ前は小規模な作品でも10億円を超えるヒットが年間いくつもあったが、現在の市況では大きな追い風でも吹かない限り、数億円がやっと。年間1300本ほど公開される作品のほとんどがそこにさえ届かない。
そうしたなか、リバイバル上映は固定ファンの安定した集客が見込める手堅いコンテンツになることから、ヒットするかコケるかわからない新作より劇場側は歓迎し、スクリーンを積極的に割り当てる。そのスクリーン数がリバイバル上映のヒットにつながる。そんな好循環が生まれている。
リバイバル上映は、ファン、製作会社、劇場にとって三方良しのコンテンツになる。
映画業界にとって“ネガティブな作用”も
一方で、映画業界全体および映画文化にとってはネガティブに作用する側面もある。
興行通信社による1月9日~1月11日のミニシアターランキング(小規模公開作品の週末観客動員数TOP5)が象徴的だが、TOP3をリマスター版のリバイバル上映が占め(『パプリカ』4Kリマスター版、『悪魔のいけにえ』4Kデジタルリマスター公開50周年記念版、『ストレイト・ストーリー』4Kリマスター版)、新作が1作も入らなかった。
これが意味するのは、リバイバル上映によって、オリジナルをはじめとする新作の上映機会が奪われていること。とくに小規模な作品に顕著だが、ミニシアターの限りあるスクリーンの奪い合いのなかで、上映期間が短くなったり、上映そのものがなくなるなどのしわ寄せがきている。
興行ビジネスにおいて、当たる作品にスクリーンを割り当てるのは真っ当な経営判断だろう。しかし、それによって映画界が本来持つべき多様性が失われる。さまざまな国の文化や価値観が異なる作品が上映されてこそ映画文化が育つ。それが損なわれれば、映画文化も産業も衰退の一途を辿る。


















無料会員登録はこちら
ログインはこちら