対照的に、人口の大多数を占める下位60%の家計にとって、状況は正反対である。彼らが所有する資産は形成資産全体のわずか14%程度にすぎない。
一方で、彼らの債務対所得比率は1989年から2019年の間にほぼ倍増している。
実際、アメリカの成人の50%が400ドルの不意の出費を賄えず、5人に1人はどのような出費も支払えないと回答している統計がある。
上位層にとって債務は資産を増やすためのツールだが、下位層にとっての債務は日々のやりくりに苦しむ「死活問題」となっているのだ。
降りてくるのは富ではなく「借金」だった
かつて、富裕層が豊かになればその恩恵が社会全体に滴り落ちるという「トリクルダウン理論」が唱えられた。
しかし、負債の経済学の視点から見れば、この理論は致命的な一点を除いて誤りであった。
「下にこぼれ落ちてきたのは資産ではなく、債務だった」のである。
例えば、政府が中低所得層へ救済小切手を送るために借り入れを行ったとする。
SAMさんのような低所得者がその資金をスーパーで消費すれば、その利益はスーパーを経営する富裕層のLAURAさんの懐に入る。LAURAさんは高収益を得て、さらに所有する自社の株価上昇という恩恵も受ける。
一方で、SAMさんは手にした現金を使い切り、後に残るのは社会全体の債務負担と、さらに拡大した資産格差だけである。


















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