資産価値の上昇と負債の間には、密接な因果関係がある。筆者は、債務の累増こそが株式や不動産の評価を押し上げる最大の要因であると指摘する。
不動産を例に取れば、その価値を維持・上昇させているのは、購入者がローンを組める能力にほかならない。貸し手の与信方針が寛容になり、より多くの人がより多額の借り入れをできるようになれば、買い手が増え、価格は吊り上がる。
もし、購入資金の全額を現金で支払わなければならないとしたら、不動産市場は瞬時に崩壊し、価格は激減するだろう。
株式市場も同様の力学に支配されている。証券会社による「信用取引」という名の負債が、市場全体の価格決定に不釣り合いなほどの影響を及ぼしている。
株式の時価総額と総債務の相関は、企業収益やGDP全体との相関よりもはるかに高い。
つまり、私たちが「富」と呼んでいるものの多くは、直接的または間接的に、債務の存在とその拡大を前提とした「マネー化された将来の収入」にすぎないのである。
債務が増えるほど資産価値が上昇するというこの「錬金術」が、現代経済の基盤となっている。
資産が増える上位10%と負債に喘ぐ下位60%
債務による資産形成というシステムは、決して万人に対して平等ではない。むしろ、この仕組みこそが格差拡大の自動装置として機能している。
アメリカの家計データを所得層別に分析すると、残酷な実態が浮かび上がる。所得上位10%の家計は、株式と不動産全体の約60%以上を所有している。
彼らの純資産はGDPに対して驚異的な伸びを示す一方で、負債の比率は彼らのバランスシート全体から見れば微々たるものだ。


















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