朝ドラ「ばけばけ」 小泉セツは本当に妾ではなかった?長男がみた父・小泉八雲の素顔

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ハーンは「左様、寺」と告げて、また別の寺へと車夫に連れていってもらい、それが終わるとまた……。寺や神社を巡るのが、たまらなく好きなハーンだった。

妻のセツに向けられたハーンのまなざし

また一雄は、母のセツ本人から新婚当初のことについて、こんな話をたびたび聞いている。

セツが自分の手が荒れているのを恥ずかしがっていると、ハーンはその手を優しくさすりながら、こう言ったのだという。

「あなたは貞実な人です。この手、その証拠です」

このとき、島根県尋常中学校の教頭だった西田千太郎も同席していた。ハーンが「最も信頼した、日本人中第一の友」とする教育者である。西田はこのときのハーンの言葉を、セツに丁寧に訳して聞かせたのだという。

さらに父から直接こう言われたこともあると、一雄は振り返っている。

「ママの手足が太いのは少女時代に盛んに機を織ったからだよ。すなわち親孝行だからだ」

冒頭で紹介したツルの証言だけ聞くと、ハーンがひどい男性のように思えるが、日本語のニュアンスの行き違いがあったのかもしれない。少なくとも妾として品定めしたわけではなかっただろう。一雄はこう断言している。

「私としては第一、父が宿で妾を世話せよだの、テンポラリィ・ワイフを取り持てだのとは到底言い得る性格の人間でないと思う」

異人の物珍しさから、一挙手一投足が注目されたハーン。『ばけばけ』では、新聞記者から密着取材を受けて、家族もうんざりする様子が描かれた。実際のハーンも毀誉褒貶にさらされて、苦労したようである。

【参考文献】
小泉一雄著『父小泉八雲』(小山書店)
小泉八雲著『知られぬ日本の面影』 (響林社文庫)
E・スティーヴンスン著(遠田勝訳)『評伝ラフカディオ・ハーン』(恒文社)
牧野陽子著『ラフカディオ・ハーン-異文化体験の果てに』(中公新書)
小泉節子著、小泉八雲記念館監修『思ひ出の記』‎(ハーベスト出版)
小泉凡著『セツと八雲』(朝日新書)
NHK出版編『ドラマ人物伝 小泉八雲とセツ:「怪談」が結んだ運命のふたり』(NHK出版)
工藤美代子著『小泉八雲 漂泊の作家ラフカディオ・ハーンの生涯』(毎日新聞出版)
櫻庭由紀子著『ラフカディオハーンが愛した妻 小泉セツの生涯』(内外出版社)

真山 知幸 著述家

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まやま ともゆき / Tomoyuki Mayama

1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作40冊以上。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動やメディア出演も行う。最新刊は『大器晩成列伝 遅咲きの人生には共通点があった!』( ディスカヴァー・トゥエンティワン ) 、『ひょんな偉人ランキング ―たまげた日本史』(さくら舎)。「東洋経済オンラインアワード」で、2021年にニューウェーブ賞、2024年にロングランヒット賞受賞。
X: https://twitter.com/mayama3
公式ブログ: https://note.com/mayama3/

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