アップルがグーグルGeminiをSiriに組み込んだ戦略。ChatGPTに続きAIを中枢に置かず交換可能な部品として扱う狙い

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京都出張前の佐藤さん。忙しい彼は、歩きながらiPhoneに呟く。 「来週火曜日の京都出張、午後の会議に合わせて、宿泊先と移動ルートを最適化して。予算は3万円以内。夕食はクライアントと静かに話せる個室がある和食を3つ提案して。予約できるかも確認しておいて」

これまでのSiriなら、「ウェブで検索した結果はこちらです」と無愛想にリンクを出すだけで、仕事を途中で止めてしまっていた。

しかし、Geminiを「部品」として手に入れた新生Siriは、水面下で次のような連携プレーを行う。

ステップ1:Foundation Modelsを通して、ユーザーに最も寄り添った答えを提示

まず、iPhoneの中にいる「アップル自前のAI」が動く。これは佐藤さんのカレンダー、メール、過去の予約履歴といった「極めて個人的な情報」を読み解く。会議の場所はどこか、佐藤さんはどんなホテルを好むのか。プライバシーを第1に考えて設計された、優れたソケット「Foundation Models」の設計のおかげで、ここでやり取りされるプライベートな情報はiPhone及びPrivate Cloud Computeというプライバシー保護を最重要視した一時利用のためのクラウドから一切外に出ることはない。

ステップ2:個人情報という餌を与えず、グーグルの「巨大な脳」を使い走りにする

次に、SiriはグーグルのGeminiに命令を出す。「東山エリアで、予算3万円以内で、個室がある和食屋をピックアップして。リアルタイムの空席情報も調べて」。Geminiは世界中の膨大なデータを使って、数秒で最適な答えを導き出す。この時、Geminiに渡されるのは「条件」だけであり、佐藤さんの氏名や特定のスケジュールは隠されている。

ステップ3:一つの「体験」としておもてなしする

最後に、Siriは全ての情報を統合し、佐藤さんにこう答える。「ホテルは会議室から徒歩5分のここ、夕食は東山のこの3軒が最適です。ボタンを押せば予約を確定します」

佐藤さんから見れば、これは「賢くなったSiri」でしかない。裏側で頑張っているのは、実はグーグルのGeminiなのだが、佐藤さんはおそらくアップルのSiriは賢いと思って、そちらに感謝をすることになるだろう(そして5年後、佐藤さんの知らないところで、ソケットの向こう側のAIは、Geminiから他のものに切り替わっている可能性がある)。

「プライバシー・ランドリー」:知能の洗浄機

ここで気になるのが、一見するとGeminiがiPhoneのカレンダーに予定を書き込んだり、写真を整理したりといったプライベートな情報の取り扱いも可能になっている点だろう。

実は、これらはアップルが定めた厳しい「ルール」を通してのみ許可されている。

アップルのAIのOS統合戦略では、AIがプライベートな情報を扱う際の仲介を果たす「Tool Calling(ツール・コーリング)」という技術が用意されており、これを迂回することができない。

さらに予想外の生成をしないように制限をかける「Guided Generation(ガイデッド・ジェネレーション)」といった技術もあり、よく生成AIで起こるユーザーを困らせる想定外の振る舞いが極力制限されている。

このようにGeminiを取り入れるには取り入れるが、しっかりと制御下に置こうとするのがアップル流だ。そんなアップルが一番、重きを置いて厳しく制限しているのがプライバシーの扱いだ。

グーグルのビジネスの根幹は、ユーザーの行動データを集め、それを広告に活かすことだ。しかし、これから実装されるアップル流では、これが大幅に制約される。

グーグルのブログ記事にもあるよう「Apple Intelligenceは、アップル独自のPrivate Cloud Compute(PCC)上で動作し、アップルのプライバシー基準を維持する」。

これが意味するところは「グーグルの知能は借りるが、グーグルの監視(データ収集)はiPhone内には一歩も踏み入れさせない」という鉄壁の防衛線を張っているということだ。

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