アップルがグーグルGeminiをSiriに組み込んだ戦略。ChatGPTに続きAIを中枢に置かず交換可能な部品として扱う狙い

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「ファウンデーション」とは日本語で「基礎」や「土台」を意味する。多くの人は、これを読んでGeminiがアップルのAI技術の土台に組み込まれ、ふところに切り込んだと思うかもしれない。

しかし、アップルの開発者向け資料(developer.apple.com)を読み解くと、それとは少し異なる様相が浮かび上がってくる。この技術の仕組みはもっと巧妙だ。

実はApple Foundation Modelsは、特定のAIだけではなく、どんなAIでも差し込める「魔法のソケット(コンセント)」のような技術になっている。

想像してほしい。あなたの家にある壁のコンセントは、電力会社の電気が流れていようが、家庭用ソーラーパネルの電気が流れていようが、差し込む家電は関係なく動く。「コンセントの形」さえ決まっていれば、中身の電気の出処はいつでも切り替え可能だ。

「Foundation Models」フレームワーク(枠組み)は、まさにOS内部に用意されたAI統合のためのコンセントの役割を果たす。

Foundation Modelsに対応するということは、ChatGPTも、新たに加わるGeminiも、アップルが定めた共通の規格でiOSを含むアップル製OSに統合される、という意味だ。アップルの自前AIの搭載は、品質が伴うまで先送りして、とりあえず数年間は最もイキの良いAI=グーグルのGeminiをメインに使うというだけのことに過ぎない。

裏を返せば、数年後にグーグルよりも優れたAIが登場すれば、アップルはユーザーに気づかれることなく、プラグを差し替えて、そちらに乗り換える可能性があるし、もし、それまでに自家製のAIが良い感じに育ってきたら、そちらに切り替える可能性もある。

今回の発表は、昨年後半から急速に品質が向上したグーグルのGeminiを、iPhoneというアップル製品の一部品に格下げして組み込んでしまおうとする戦略なのだ。

アップルの開発者向け資料
今回のニュースを正しく読み解く上で重要なApple Foundation Modelsの開発者向け資料(写真:アップル)

歴史は繰り返す:ジョブズが宿敵と手を組んだ日

実はこれはアップルが、これまでにも繰り返してきた常套手段に過ぎない。

常にユーザーにとって「最高のものを届ける」とうたっているアップル。実はこれまでも、その方がユーザーにとって得だと思えば、積極的に他社の協力を仰いできた。

例えばWebブラウザ。今でこそアップル製品と言えば、自社製のWebブラウザ「Safari」が標準ブラウザとなっているが、インターネット黎明期、アップルが力を入れたのはブラウザ開発ではなく、インターネット接続をするための基盤技術のみだった。

この優れた基盤があったからこそNCSA Mosaic、Netscape Navigatorといった初期のWebブラウザがMac上で盛り上がった。その後、いよいよ一般の人々にもインターネットが広まるという1997年、スティーブ・ジョブズがWebブラウザを提供するパートナーとして選んだのは、当時、アップルの宿敵と見られていたマイクロソフト社だった。

次ページアップルが繰り返してきた「技術の黎明期おける外部調達」
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事