「私の身体は私のもの」——中絶をめぐる女性たちの葛藤と現実《予期せぬ妊娠は他人事ではないのに…》選択を縛る制度の壁

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日本では、そもそも権利意識が弱い傾向もある。

「多くの女性が、『自分の身体のことは自分で決める』、と小さい頃から教わっていない。なのに、決めるからには責任を持って独りで背負え、という世間の空気もある。

でも、決めるためにはサポートや情報、お金も必要です。性教育がきちんと行われ、病院や薬局の選択肢が増え、いろいろな人生や選択肢があって、どれも間違いじゃない、という社会になってほしい。

それは大変なことだけど、女性の選択肢を認めない発言などに『は?』と言い返すことなら、1人ひとりが日常でもできることだと思います」(大橋氏)

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本当に女性の人権は保障されているのか

妊娠・出産に対しては、不妊治療に自治体が補助を出す、出産費用を無償化しようとする厚労省の動きがある。しかし、産まない場合の支援はなく、中絶は初期でも10万~15万円もかかり、経口中絶薬も同価格と高額で、使える病院はごく一部。

避妊手段も少なく、セックスの後72時間以内に飲めば妊娠しないようにできる緊急避妊薬(アフターピル)は、ようやく処方箋なしでの薬局販売が2月2日にスタートするが、1錠7480円もするうえ、ドラッグストアや薬局で薬剤師の目の前で飲まないといけない制約がある。

「どれかだけを支援すると、制度はそれを推奨することになってしまう。少子化対策のために、避妊や中絶のハードルを高くしているのではないかと勘繰ってしまうぐらい、政府はアクセスが悪い状態を変えようとしない。

でも、人は自分で選んだことでないと後悔しがち。中絶させないことで人口を増やした国では、ヤミ中絶で女性が死んだり捨て子が増えたりした例もあります。自分を肯定できない育児はつらく、『産むんじゃなかった』という心境に陥るリスクもあるのではないでしょうか」(大橋氏)

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妊娠を中断する選択をした人が、永久に子どもを産まないとは限らない。また、中絶で傷ついた人がその後の性生活に消極的になるなど、将来産む可能性を減らすこともありうる。

自分の人生を自分で決めたいだけなのに、法律による制限を受け男性の承認を必要とする国が、本当に女性の人権を保障していると言えるのか。そうした現状も、少子化の要因の1つではないだろうか。

連載「産むも、産まぬも」では、出産・子育て・パートナーシップ・キャリアなど、“産む/産まない”という選択にまつわる経験や考えを語ってくださる方を募集しています。性別や立場は問いません。「誰にも話せなかったことを、言葉にしてみたい」「同じように悩む誰かの力になりたい」そんな思いを持つ方の声を、丁寧に取材・掲載します。

ご協力いただける方はこちらのフォームからご応募ください。
阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。

女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『おいしい食の流行史』(青幻舎)『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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